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曽我廼家文童・林与一・舟木一夫・水谷八重子・英太郎

痛快な芝居と名曲の数々に彩られたコンサートで、楽しい年の瀬を!
97年に初めての公演が行われて以来、本格的な舞台づくりと圧巻のコンサートという二部構成で、観客を魅了してきた新橋演舞場の『舟木一夫特別公演』。2年後の芸能生活55周年に向けて、ますます勢いを増す“永遠の青春スター”舟木一夫が、今年も新橋演舞場に登場する。通算15回目となる今回の公演は、12月1日から23日まで。第一部では、幕末の英雄・勝海舟の父・勝小吉をモチーフにした『―巷談・勝小吉―気ままにてござ候』が、第二部では、新曲「春はまた君を彩る」や「高校三年生」などの大ヒット曲を中心にした『シアターコンサート』が上演される。コンサートは昼夜で構成が変わるほか、おなじみの企画「みんなde舟木」や、舟木一夫バースデースペシャルイベントなども予定されており(詳細は決まり次第、松竹ホームページ等で発表)、劇場が一体となって盛り上がれる、楽しい公演となりそうだ。
 
キャストは、座長である舟木一夫をはじめ、舟木とは今回が初共演となる、劇団新派を代表する女優・水谷八重子が特別出演。また、歌舞伎俳優として活動後、映像や商業演劇の世界に身を移し、舟木の長年の友人でもある林与一。劇団新派唯一の女方・英太郎。松竹新喜劇などで活躍中の曽我廼家文童など、豪華俳優陣がずらりと顔を並べる。第一部の脚本は、『花の生涯―長野主膳ひとひらの夢―』(13年)、『―天一坊秘聞―八百万石に挑む男』(14年)に引き続き、齋藤雅文が手がける。

【『―巷談・勝小吉―気ままにてござ候』あらすじ】
時は江戸。旗本・勝家の婿養子である小吉(舟木一夫)は、無役の上、喧嘩好き。乳母・お熊(英太郎)とともに、職を求めて各所に日参するが、すぐ短気を起こし、うまくいかない。そんな小吉に怒った勝家の祖母・環(水谷八重子)から、役職につくまで小吉の許嫁で孫のおのぶ(葉山葉子)と祝言はさせないと宣言されてしまう。そんな中、ある出来事をきっかけに家出同然に出奔してしまった小吉。そこへ、おのぶが身重との知らせが…。

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10月22日、墨田区両国の回向院にて、公演の成功祈願と製作発表が行われた。キャストの舟木一夫、水谷八重子、林与一、英太郎、曽我廼家文童のほか、安孫子正松竹株式会社副社長、脚本の齋藤雅文が出席し、本堂でおごそかに成功祈願が行われた後、製作発表に移った。

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【挨拶】
 
齋藤雅文 一昨年、去年とちょっと硬い芝居が続いたので、明るい、笑えるものを作ろうかと舟木さんとお話をして、勝小吉ということになりました。本所の小吉というと喧嘩上手で鳴らした人で、大変遊び上手だったそうですが、「夢酔独言」(自伝)のなかでいろいろな面白いエピソードがあるので、それを並べていたら、ご覧のとおり大人の役者さんばっかり揃っておりますので、こんなに書きやすいことはなかったです。キャラクター設定すると、皆さんの声が自然と聞こえてくるという感じで、そのまま書いてたら50ページも多くて(笑)、反省して、舟木さんと相談して90分にまとめました。凝縮して面白いものになるはずだと思っています。
 
舟木一夫 早いもので、演舞場にお世話になり今回で15回目ということで「えーっ」と。副社長(安孫子正)が「重厚な」と仰ってくださいましたが、聞こえはいいですが、平均年齢いくつになるのか、ややこしいところですが(笑)「高齢化社会の希望の星の舞台」ということで、頑張ればいいのかと思っております。2年ほど正座をしたようなお芝居が繋がったので、今回は大暴れの芝居、タイトルそのまんまで「気ままにてござ候」と。小吉だけじゃなく出演者全員が「気ままにてござ候」というスタンスの芝居ですので、楽しみにしていただいて、応援をお願いしたいと思います。

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水谷八重子
 舟木さん、初めまして(笑)。「御三家」と言われる、橋幸夫さんが15か16歳の時でしたか、大映の映画でご一緒になり、その後、明治座でお芝居なさる時に出させていただきました。西郷(輝彦)さんとは東宝の舞台で、森繁(久彌)先生のもとで何本もご一緒させていただきました。舟木さんだけが初めましてなんです。(舟木「残り物には福がある」)大福でございます(笑)。八重子を呼んでよかったと思っていただけるように、責任をもって環というおばあちゃまの役を勤めさせていただきます。

林与一 去年に引き続き、2年続けて舟木さんの公演に出させていただいております。とにかく舟木さんの足を引っ張らないように、縁の下の力持ちで、公演が面白くなるように勤めていきたいと思います。

英太郎 ここ2年ぐらい舞台を休んでおりましたが、大好きな舟木さんの公演に出させていただき、しかもぴったりの、小吉一筋、命のばあやでございます(笑)。どこまで勤まるかわかりませんが、ご迷惑かけないように、芝居を面白くできたらと思っております。

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曽我廼家文童
 江戸のお芝居に、大阪の私が出てええんやろかと思うております。齋藤先生が面白い本を書いていただきまして、実は「ちょっと僕の役が良すぎるん違うか」と女房に言いましたら、「役者、ええ役もろて、なに文句言うことあんねん」と。反省して、新幹線、乗って参りました。きっと楽しいお芝居、先輩方のお力を借りまして、僕自身も勉強さしていただきますので、よろしくお願いいたします。

【質疑応答】
 
──舟木さんと水谷さんは初共演ということで、お互いの印象は?
水谷 私は、いつまでも「高校三年生」のあの学生服で、とてもひ弱で、強い風が吹いたら倒れちゃう、そういうイメージでお目にかかったらドーンとしてらして、素晴らしい貫禄がおつきになって、「お傍に控えさせていただきます」という感じになりました。
舟木 初めましてというのは、実は間違いでございましてね。
水谷 えっ?
舟木 僕が初めてお目にかかったのは、デビューして1年半目ぐらい、19か20(歳)の頃。その頃、お姉さんはショー・ビジネスのほうで、事と次第によっては網タイツをはいて、ナイズバディっていうところで、もう大活躍をされてたスター。僕が初めてお姉さんを目撃したというか、一方的に「初めまして」というのは、青山通りにアマンドという喫茶店がありますね。深夜までやってたんですよ。僕は当時、ユアーズというスーパーマーケットがありまして、僕は四ツ谷に住んでいたので、夜中にお腹が減って、パンを買いに行ったら、ベンツの二人乗りの車が停まってて、「かっこいい車だな」と思ってみとれてたら、喫茶店からお姉さんが出てきて、颯爽と乗り込んで走り去ったという、初対面の経験があります(笑)。芝居では初めてで、どうぞよろしくお願いいたします(笑)。

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──本をふまえて小吉の役作りはどう考えていますか?
舟木 今回の芝居は、出演者全員が変なんです。それはそもそも、主人公の勝小吉という人が、ご存じのように相当変なおじさんなんですよね。いろんな資料を読ませていただくと。だから、楽しいお芝居に仕上げるのは、実は「親子鷹」というラインにこだわらなければ、今回みたいに齋藤先生の作ということで、独自の本になると、遊びがふんだんに出てきて。僕はお姉さんにいびられまくって、最後まで馬鹿扱いされる役なんです。珍しいですよね、先生ね、こんなに主役が最後まで「馬鹿だ」って言われる芝居(笑)。
──与一さんと舟木さんは、昭和39年の『赤穂浪士』から50年来の付き合いで、エピソードがあれば伺いたいのと、半世紀たって、演出家はいますが、役作りを二人でお話になることなどは?
 私は、最初の『赤穂浪士』からのお付き合いをさせていただいて、長谷川(一夫)から「こういう歌い手さんが時代劇を初めてやるそうだから、ついていてやってほしい」と言われて、ついてたんですが、歌でデビューなすったわりにはまったく教えることがなく、ただただついて、休み時間にお茶を飲みにいっていて、いつも私のほうから「押しかけ親友」と。役者同士で50何年お付き合いできる方はいないし、芸能界で役者同士は全部敵(かたき)で、1人倒れれば1人助かるということで(笑)、去年一昨年とたくさんの芸能人が亡くなって「俺の時代がそろそろ来るな」と思ってますが(笑)、亡くなる方はみんな良い人で、生きてる人はみんな悪い人じゃないかという考えになりますが(笑)。本当に長いお付き合いをさせていただき、お芝居の時はともかく、普段タメ口をきかせていただくような親友です。今は100パーセント以上、心配なく時代劇をおやりになって、逆に僕なんかが「あれ違うんじゃないの」と言われることがあるように、僕がちょっとボケてきておりますが、50年来の友達と思っておりますので、今度は勝小吉の友達のお役なので、普段の友達感覚が舞台になかなか出るのは難しいのですが、それを楽しんでもらえればと思います。
舟木 僕は「おじさん」と呼びますが、ただのおじさんという意味もありますが、実は僕のなかでは時代劇をやるときの「叔父上」に当たる人だと思っているので。この方も、人のことは言えない変なおじさんですから、大先輩にもかかわらず気楽な口をきかせていただいて、普段大変ご無礼を申し上げております(笑)。申し訳ございません。今後もそのペースで行きますので、よろしくお願いいたします(笑)。
 普段はそうやって謝ってくれないのに、人前でどうして謝るんだ(笑)。
 
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──齋藤先生に、それぞれの役者さんのこういうところを活かしたいというところは? また役者さんの皆さんは、それに応えて抱負をお願いします。
齋藤 文童さんは上方の味を出していただくと、芝居がいっぺんに和やかになるので、ぜひ発揮していただきたいなと。江戸のお芝居ですが、旅から旅への占い師で、実際あったエピソードですが、勝小吉に女難の相、剣難の相があると言うところで活躍していただく。与一さんは、(小吉の)親友ですが、乞食から侠客になって、最後、舟木さんと大立廻りを演じるという、『め組の喧嘩』みたいなノリはどうだろうか、という勢いで書いてしまいました、すみません(笑)。舟木さんはパスして、僕は劇団新派の文芸部ですから、八重子に書くのはとても勇気がいるんです。しかも、お祖母さんの役なので、怖々書きました(笑)。英さんも劇団の大先輩ですので、ただ僕も最近ご一緒することが少なかったので、昔『恋ぶみ屋一葉』や杉村春子先生の芝居の時に、英さんに出ていただいて、英さんに当てて書いた役とか、僕のスタートではありますので、久しぶりに書けて、走りに走って、いつでも出てる感じになって、すいませんでした(笑)。
舟木 これは本来、僕みたいな線の人間がやる役ではたぶんないと思うんですね。豪放磊落な感じのする先輩方がおやりになったと思うんですが。時々申し上げるんですが、そういう定番のイメージのあるものは、切り口を思い切り変えてみると、ミスキャストに見えるところに、50パーセントの新しさが出てくる可能性も確かにあるんですね。だから、勝小吉という人は、年末のお芝居には、思い切り筆を乱暴に走らせて書いていただければ、楽しいお芝居になるんじゃないかと相談をしたんですね。役作り云々より、師走の年忘れ公演というにおいがパーッと賑やかに出てくれれば一番嬉しいかなという風に捉まえております。
水谷 楽しい公演に、私の役は一緒に乗っかっちゃっていいのかな? これはキュッと締めなくちゃいけない役なのかな? と、今クエスチョンマークがいっぱいでございます。

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 何しろ私も、ばあやをやるのは初めてなので(笑)。本当に「小吉命」という、大変な小吉贔屓のばあやで、その役になりきることに、今からドキドキしております。稽古が楽しみです。
舟木 でも考えてみましたら、こんなに若い娘っ子が出てこない芝居ってのも(笑)。
 とても面白い本で、良いお役ですが、こんな役者が困る役はなくて。役者というのは、役をもらうといろんなことを考えて、いろんな役にはめるように研究しますが、役をはめられて書いていただいたのはありがたいですが、自分というものはなかなか舞台に出ないもので。読んでいると本当に自分が納得するような台詞、納得するような本になっていますが、自分をいかに出せてこの役に取り込めるかが課題です。
曽我廼家 僕は齋藤先生が新派の座付き作家さんであること、役者さんをよく見て、普通の戯曲家の方は自分の思い通りに書いて、そこに合う役者を選ぶ。ただ劇団というものは、その人を見て書くという、本書きさんとしてはすごくハイレベルだと思うんです。齋藤先生が求めてはるものに、どれだけ応えていけるのかなという不安と、早く求めてる答えにやりたいという気持ちとのジレンマが、してるうちにひと月という公演が終わってしまうので、何とか三月か四月ほど芝居をのばしていただけんかなといつも思うております(笑)。勉強しますので、よろしくお願いいたします。

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〈公演情報〉
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新橋演舞場12月公演 松竹創業120周年
『舟木一夫特別公演』
一、『―巷談・勝小吉―気ままにてござ候』
二、『シアターコンサート』
出演◇舟木一夫 水谷八重子 林与一 英太郎 葉山葉子 曽我廼家文童 ほか
●12/1~23◎新橋演舞場
〈料金〉
一等席13,000円 二等席8,500円 三階A席4,500円 三階B席3,000円 桟敷席14,000円(税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または03-6745-0888



【取材・文・撮影/内河文】