昭和の名曲 音の楽園 17年初夏号掲載 (コロムビアファミリークラブ)
”情歌”の人
船村徹(本名:福田博郎)は1932年(昭和7年)6月12日栃木県塩谷郡船生村で生まれた。船村の筆名は船生村に由来する。
▼反骨心に満ちた青年時代
獣医であり、地元有力者であった父岸三郎小4で、翌年すぐ上の兄、更に次の年保護者であった歳のはなれた長兄を亡くし、戸主的立場となった。今市中学校卒業後、東洋音楽学校進学を選択したため、”チンドン屋の学校”に入ったと親戚縁者からのバッシング、仕送り無しの兵糧攻めにあう。反骨心に満ちた博郎青年は、演歌師となって自力で学費、生活費を稼いだ。この世界でも音楽力を認められ、クラブのバンドマン、バンドマスターへと”出世”もしている。
▼レコード会社へ曲売り込み日々
音楽学校入学して間もなく、知り合った作詩家志望の高野公男と意気投合した船村は、コンビで曲作りを始める。作曲家船村徹のスタートとなった。
プロの作家を目指す二人は、キャバレーの女性を通して知己を得たキング文芸部長からのちに三橋・春日時代を築いたディレクターを紹介され、曲売り込みにキングに日参した。当時同じように日参していたのがデビュー前の三橋美智也だった。当然才能が認められていたから曲を見てもらえたのであり、才能を認めてくれるディレクターとの出会いが二人にとって幸だった。
▼戦略的な曲作りで頭角を現す
無事レコード・デビューを果たし、その3作目三橋歌唱の「ご機嫌さんよ達者かね」が大ヒット、「あの娘が泣いてる波止場」「別れの一本杉」と連続ヒットした。
そこにはベテランと同じような曲では勝負にならないと考え、定型詩ではなく”破調”で”会話的”な詩をもとに曲作りをした二人の戦略があった。会話的な歌詩に付けられた船村徹の”栃木訛り”のメロディーが親しみ易く大衆受けしたこともあった。船村はコロムビアの作曲コンクールで入選するほどの腕前であったが、高野と企て、その詩に触発されたことにより個性的で斬新な才能を開花させていた。
そこにはベテランと同じような曲では勝負にならないと考え、定型詩ではなく”破調”で”会話的”な詩をもとに曲作りをした二人の戦略があった。会話的な歌詩に付けられた船村徹の”栃木訛り”のメロディーが親しみ易く大衆受けしたこともあった。船村はコロムビアの作曲コンクールで入選するほどの腕前であったが、高野と企て、その詩に触発されたことにより個性的で斬新な才能を開花させていた。
▼日本コロムビアへ移籍
昭和31年、血の気の多い二人が色々ともめ事を起こし、キング専属でないことに目を付けたコロムビアは、結核で療養中の高野と共に厚遇で専属作家に迎えた。その第一作が「早く帰ってコ」で、みごとにコロムビアの期待に応え、長く専属作曲家として活躍することになる。
コロムビアに移籍した年の9月、盟友高野が逝き、相棒を喪った船村だが、野村俊夫、石本美由起、西沢爽、星野哲郎、西條八十、丘灯至夫、吉岡治と多彩な作詩家、美空ひばり、青木光一、島倉千代子、コロムビア・ローズ、織井茂子、村田英雄、小林旭、北島三郎、舟木一夫、大下八郎、島和彦、ちあきなおみ、鳥羽一郎と個性豊かで歌唱力のある歌手を得て、高野と共に開花させた個性的な才能で多彩な作品を多数生み出した。
▼ヒット曲を続々ととばす
なかでも、成功のきっかけの破調で訛った”故郷演歌”から「矢切りの渡し」、星野哲郎とのコンビでの「なみだ船」「おんなの宿」「兄弟船」、美空ひばり、北島三郎等の歌唱力を生かした骨太で構成力のある歌「みだれ髪」「哀愁波止場」「風雪ながれ旅」「王将」等により船村は日本の歌謡曲を成熟完成させたと言って過言ではないだろう。
▼二代目船村徹として活動
昭和53年船村は昭和40年代から急激に変化した歌謡界に思うところあったのかフリーとなり二代目船村徹を名乗り、作家活動の他に演歌巡礼、慰問公演とギターと歌による実演活動にも手を広げた。平成28年文化勲章受賞、29年2月16日突然の死去まで生涯現役を全うした。生涯手掛けた曲は5000以上といわれる。
▼船村徹の、作曲家人生
船村徹が一貫して描いたのは華やかな人間世界ではなく、巷に生きる人と人との情け、男と女との愛情、友との友情であり、自らも情を語り伝える歌手でもあった。
船村が語ったように船村徹の曲は演歌というより情歌と呼ぶにふさわしいだろう。
(評伝 三木容)
舟木さんへ提供された楽曲も収録されています。
1 郷 ふるさとありて 収録 夕笛
https://youtu.be/oZcDgS8Dxpk
https://youtu.be/oZcDgS8Dxpk
3 情 心にしみる情け歌 収録 津和野川
4 巷 都会の人模様 収録 あいつと私
https://youtu.be/yFdivav89qQ
https://youtu.be/yFdivav89qQ
5 七彩の歌種 収録 その人は昔
https://youtu.be/t1ioJopfXZs
https://youtu.be/t1ioJopfXZs
6 歌巡礼 船村徹自演集 収録 サンチャゴの鐘
https://youtu.be/iVs8gQd0FPs
https://youtu.be/iVs8gQd0FPs
*5 七彩の歌種には、村木弾さんの新曲「都会のカラス」も収録されています。