~再び前を向いてボクは動き始めました。まだ40代前半。デビューした頃に見ていた先輩たちの年齢までいっていない。やり方によってはできるかもしれないと自分を奮い立たせました。~中略~そんな折、コンサートや演劇の企画会社アイエスの伊藤喜久雄社長(当時)を訪ねました。~中略~しかし、東京・四谷の事務所でお会いすると「失礼ですが今のあなたにはお金のニオイがしません」と断られてしまいました。~中略~90年に約7年ぶりとなるシングル「落日のあとで」発売を経て翌年、2年ぶりにアイエスを訪ねました。~中略~これを機に、動きは慌ただしくなっていきました。ちょうどデビュー30周年が迫っていたことは、人生の不思議な巡り合わせだったのでしょうか。~中略~゛寒い時期゛を乗り越えられたのは家族の支えもあったと思います。74年に結婚した嫁さんとはもう43年。身近にいてくれる…う~ん何だろ。よくわかんねえな(笑い)~一部抜粋させていただきました。
揺れてる車内撮影で写真も記事がブレましたがご容赦ください。
一般社団法人 コンサートプロモート協会 HP 2013年秋号より
http://www.acpc.or.jp/magazine/navi_issue.php?topic_id=134
デスクに座る伊藤相談役。オフィスの奥にある仕事スペースには、社員に向けた直筆メッセージが貼られている
撮影:小嶋秀雄
ヒット曲の聴かせ方
高齢化社会が進む日本のライブ・エンタテインメント業界において、60代以上の観客から支持される公演を継続的に用意することは、大きなテーマの一つ。この課題を、豊かな企画力と独自のマーケティング理論で見事にクリアしているのが、今号でご登場いただくアイエスです。「今日、最も輝ける世代=グロリアスシックスティー」と名付けたターゲットに、確実に標準を絞ったコンサートや演劇をラインアップする同社の相談役であり、80歳を迎えても現役のプロモーターであり続ける伊藤喜久雄さんにお話を伺いました。伊藤相談役が長年のキャリアから培ってきた「60代以上の観客の心をつかむポイント」とは?
伊藤: 私たちが手がけている公演のターゲットは、主に60~70歳のご婦人で、最近は少しずつ男性も増えてきています。公演の基本になるのは、40~50年前に20歳だったお客様が、当時聴いていたり、一緒に歌っていたヒット曲です。受動的かつ能動的に愛されたヒット曲は、しっかりと大衆の記憶に残っています。そこを刺激してあげると、懐かしさが溢れてきて、青春時代が蘇ってくる。イントロが3秒流れた途端に、40年前に戻ることができる。だから歌手の皆さんには、いつも「当時の譜面通りに歌ってください」と申し上げているんです。バックも生演奏で譜面通り。お客様の記憶と違うアレンジでは、あの時代に戻れなくなってしまうんです。
マーケティングのポイントを具体的にお話しすると、例えば舟木一夫だったら「コケットリー」。昔でいう「科(しな)」ですね。舟木君は自然に科をつくることができるから、いつまでもご婦人方の青春時代の感情を呼び起こすことができるんです。梅沢富美男の大衆演劇であれば「幼児体験」。大衆演劇には、60~70歳の方々が子供の頃に体験した、地元のお祭りや寄席などの娯楽の要素が詰まっていますので、潜在的に惹きつけられる面があると思います。それと、昔は考えられなかった組み合わせを、ステージで実現することも大事。五木ひろしと都はるみが組んだコンサートや、舟木一夫、西郷輝彦、三田明の青春歌謡3人組「SK3」の公演などがそれに当たります。こういった公演は、お客様の動員が1+1+1 =3ではなく、3×3=9の倍率で増えていきます。
歌手の方々の後援会と協力関係を築くこともポイントです。舟木君の場合、一時期3万人いた後援会が、2000人くらいまで減ってしまったことがありましたが、後援会主催の公演を企画して、財務的にも独り立ちできるように、私たちがお手伝いをしたことがありました。現在は約1万人会員がいて、後援会だけでチケットの売れ行きが読めるようになりました。