5月も残りあとわずかとなりました。舟木さんファンにとっては新歌舞伎座公演も終わり、なにやら、気の抜けたようなサビシイ気持ちの今日この頃ではないでしょうか。
さて、五月は、イメージとしては一年中で一番美しい季節…という感じがします。ちなみに、私の誕生日は2日前でした…とはいえ、残念なことに美しい季節に生まれたから必ずしも美しい…ってなワケではありませんけど(笑)
去り逝く五月を謳ったとてもクラシックで美しい言葉がいっぱい詰まった詩をご紹介します。作者は、西條八十作詩「夕笛」のイメージのもととなった「ふるさとの」の三木露風。「夕笛」の原風景、世界観と通じる香りがしてくるようです。
三木露風 去りゆく五月の詩
われは見る。
廃園の奥、
折ふしの音なき花の散りかひ。
風のあゆみ、
静かなる午後の光に、
去りゆく優しき五月のうしろかげを。
空の色やはらかに青みわたり
夢深き樹には啼(な)く、空(むな)しき鳥。
夢深き樹には啼(な)く、空(むな)しき鳥。
あゝいま、園のうち
「追憶」(おもひで)は頭(こうべ)を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの「時」こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこころをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家(すみか)の
屋(をく)を出でゆく。
「追憶」(おもひで)は頭(こうべ)を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの「時」こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこころをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家(すみか)の
屋(をく)を出でゆく。
去りてゆく五月。
われは見る、汝〔いまし〕のうしろかげを。
地を匍〔は〕へるちひさき虫のひかり。
うち群〔む〕るゝ蜜蜂のものうき唄
その光り、その唄の黄金色〔こがねいろ〕なし
日に咽〔むせ〕び夢みるなか……
あゝ、そが中に、去りゆく
美しき五月よ。
われは見る、汝〔いまし〕のうしろかげを。
地を匍〔は〕へるちひさき虫のひかり。
うち群〔む〕るゝ蜜蜂のものうき唄
その光り、その唄の黄金色〔こがねいろ〕なし
日に咽〔むせ〕び夢みるなか……
あゝ、そが中に、去りゆく
美しき五月よ。
またもわが廃園の奥、
苔(こけ)古(ふ)れる池水(いけみず)の上、
その上に散り落つる鬱紺(うこん)の花、
わびしげに鬱紺の花、沈黙の層をつくり
日にうかびたゞよふほとり――
苔(こけ)古(ふ)れる池水(いけみず)の上、
その上に散り落つる鬱紺(うこん)の花、
わびしげに鬱紺の花、沈黙の層をつくり
日にうかびたゞよふほとり――
色青くきらめける蜻蛉(せいれい)ひとつ、
その瞳、ひたとたゞひたと瞻視(みつ)む。
その瞳、ひたとたゞひたと瞻視(みつ)む。
ああ去りゆく五月よ、
われは見る汝のうしろかげを。
われは見る汝のうしろかげを。
今ははや色青き蜻蛉の瞳。
鬱紺の花。
「時」はゆく、真昼の水辺(すゐへん)よりして――
鬱紺の花。
「時」はゆく、真昼の水辺(すゐへん)よりして――
~日本詩人全集「三木露風」より~
資料は、舟木さんのデビューの翌年発行「女学生の友」1964年10月号より
表紙は、「花咲く乙女たち」(1965年1月公開)で共演した西尾美枝子さん。
電子計算機が占った青春スターの人気と将来
*写真右下をクリックして拡大していただくと読めます。
一昨日の桑名の九華公園・菖蒲園の様子。まだまだ咲き初めです。