あっという間に2014年も一ヶ月が過ぎ去って、早くも2月を迎えてしまいました。珍しく風邪をこじらせて一週間近く体調不良で、たださえボーッとかすみがかかっている今日この頃の頭の中がさらにボーッとしたままで、ブログも2月に突入せざるを得なくなりました・・・
1月の24日に文楽初春公演で傾城恋飛脚「新口村」を鑑賞したので、舟木さんも舞台にかけられた「梅川・忠兵衛/恋染めて風の花」のことも、ちょっとかかわりがあるから、忘れないうちに書き留めておきたいと思っていたのですが、いっこうにまとまらず、タイトルすらどうしたものか悩みに悩んで、ええい、ままよ!と半ばヤケっぱちという感じで、こんなことになりました。
でも、悩んだのは、タイトルだけではなく、中身もなにからどう手をつけていいか、考えているうちにワケがわからなくなってしまったのでかなりまとまりのないものになっていますが、ご容赦ください・・・
国立文楽劇場 初春文楽公演
1月24日
大阪の国立文楽劇場での公演はこの初春(1月)と4月、夏(7月~8月)の公演、秋(10月~11月)の公演と今では年4回が定期公演となっています。
私はここ十数年来はこれらの全ての公演は鑑賞させていただいています。世界遺産となった文楽ですがその存続には幾多の困難が山積していて、本当に危機感を感じています。でも、嬉しいことに、私が行った日の前日は満員御礼、当日もほぼ満席で、まだ、お正月のお飾りも華やかで、こんなに盛況の客席を見ることができて感無量でした。
第1部 午前11時開演
一、二人禿 (ににんかむろ) →二人禿
一、二人禿 (ににんかむろ) →二人禿
二、源平布引滝 (げんぺいぬのびきのたき)
九郎助住家の段
九郎助住家の段
*「源平布引滝」は「平家物語」を題材とした作品の代表的なものの一つです。歌舞伎では三段目切の「実盛物語」にあたる部分です。当代仁左衛門が復活させた二段目の「義賢最期」とともにしばしば上演されます。「義賢最期」は今年の浅草新春歌舞伎公演でも、上演されました。
三、傾城恋飛脚 (けいせいこいびきゃく)
新口村の段
新口村の段
下の絵柄は傾城恋飛脚・文楽人形の忠兵衛と梅川の衣裳 ↓
黒縮緬梅花流水裾模様着付
第2部 午後4時開演
一、面売り (めんうり)
一、面売り (めんうり)
二、近頃河原の達引 (ちかごろかわらのたてひき)
四条河原の段/堀川猿廻しの段
四条河原の段/堀川猿廻しの段
*「近頃河原の達引」は、1703(元禄16)年に起こった心中事件「遊女おしゅん・井筒屋伝兵衛」を元にしたいくつかの戯曲の中の代表作。遊女おしゅんの兄で猿廻しの与次郎やおしゅんの母など肉親の情愛を中心に描かれています。
三、壇浦兜軍記 (だんのうらかぶとぐんき)
阿古屋琴責の段
阿古屋琴責の段
*源頼朝の命を狙う悪七兵衛景清の行方を問い質すため、恋人の阿古屋が秩父庄司重忠と岩永左衛門らによる詮議を受けます。景清の行方を知らないという阿古屋を岩永は拷問に掛けようとしますが、情け深い重忠は三曲(琴/三味線/胡弓)を演奏させます。しかし、阿古屋のその乱れのない美しい音色から、重忠はその言葉に偽りは無いと判断し、阿古屋を解放します。
さて、丸一日、文楽劇場にカンヅメ状態で、いくつもの演目を鑑賞しましたが、舟木さんとのご縁ということですから、第一部のラストの演目「傾城恋飛脚 (けいせいこいびきゃく)」 について、ご紹介します。
今回のブログのタイトルには以下のように掲げています。
~近松門左衛門作「冥途の飛脚」発~「梅川・忠兵衛/恋染めて風の花」着~
これは、私の頭の中で、いくつかの「梅川・忠兵衛」が混在してしまっているので、自分自身のセイリのつもりで、とりあえずこうしています。
冥途の飛脚:近松門左衛門の原作
傾城恋飛脚:文楽(浄瑠璃) 菅専助・若竹笛躬 合作
恋飛脚大和往来:歌舞伎 文楽「傾城恋飛脚」を改作脚色
浪花の恋の物語:映画 「冥土の飛脚」「恋飛脚大和往来」などをもとに成沢昌茂が脚色、内田吐夢監督による(1959年)
そして、最後に「梅川・忠兵衛/恋染めて風の花」まで到達することができるかな?
冥途の飛脚~傾城恋飛脚~恋飛脚大和往来~浪花の恋の物語~梅川・忠兵衛/恋染めて風の花
文楽や歌舞伎ではもう何べんとなく観聴きしているこの演目なのですが、文楽「傾城恋飛脚」では大抵は「新口村」のみ、そして歌舞伎「恋飛脚大和往来」では「封印切」のみかあるいは「封印切」と「新口村」のみなど上演される部分が限定されていますから、感情移入しづらいという難点もあるのかもしれません。
私個人としては、主人公の忠兵衛という人物が文楽や歌舞伎の上で観る限りにおいてはどうにも理解しがたく、また梅川が、その忠兵衛に心中立てしようとした心理もイマイチ、つかめずにいて正直手放しで好きとは言いがたい作品なんでしょうね。
とはいえ、「新口村」で忠兵衛の実父である百姓の孫右衛門と梅川のやりとりの中で浮かび上がる子を想う親の情の深さ、また愚か者とわが子を突き放しきれない哀切に満ちた叫びこそは、やはり理性では割り切れない日本人独特のツボをついてくるのです。ですから親子の情を語った浄瑠璃としては「ガッテン!」なのですが、ここで、もうひとおし「男女の情」をなんとかこの作品の中でつきとめてみたいと探ってみました。探れば探るほど、なかなか難しく、冒頭のような苦しい言い訳となってます(笑)
文楽、歌舞伎では、原作である近松門左衛門の「冥途の飛脚」を、より大衆受けして忠兵衛・梅川の悲恋が際立つような人物設定などに脚色されている上に、歌舞伎ではさらに、上方歌舞伎の「和事」的な様式美も加味されていますから、舟木さんが忠兵衛を演じていらっしゃる「梅川・忠兵衛/恋染めて風の花」の下地として、一番近く、作者である近松の意図したところもいくらか推測できる映画「浪花の恋の物語」も参考にしながら、梅川・忠兵衛の事件の背景を、探ってみることにしました。
~近松門左衛門作「冥途の飛脚」発~「梅川・忠兵衛/恋染めて風の花」着(下)につづく~