先ずは、台風の被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。三重県の状況がテレビなどで大きく報道されましたが、おかげさまで、地元では大きな被害は、ありませんでした。午後1時半開演予定の地元の市民ホールでの落語会も15分開演が遅れたものの開催されましたので、強風の中でしたが、楽しんでくることができました。終演時刻には、雨も風もおさまりました。お見舞いのメールなどを下さった皆様に、深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
さて、タイトルに掲げましたが、九月の新橋演舞場公演まで、あと一ヶ月をきりました。皆さん、もう心は演
舞場に飛んでいらっしゃることと思います。私も、もちろん、そわそわと落ち着かない気分です。
特にお芝居の「天一坊秘聞~八百万石に挑む男」が気になりますね。
舞場に飛んでいらっしゃることと思います。私も、もちろん、そわそわと落ち着かない気分です。
特にお芝居の「天一坊秘聞~八百万石に挑む男」が気になりますね。
舟木さんが演じられる山内伊賀之亮とは、どのような人物として描かれるのか?先ず、そこが一番の関心事です。
娯楽時代劇には、大きく分けると、架空の人物を中心に繰り広げられるものと、歴史上の人物をモデルにして創作の部分を膨らましたものがあると思うのですが、昨年の「花の生涯~長野主膳ひとひらの夢」と同様、今回の作品も、八代将軍・徳川吉宗を取り巻く様々な出来事や、人々に題材をとったものということですからより興味がわいてきます。
娯楽時代劇には、大きく分けると、架空の人物を中心に繰り広げられるものと、歴史上の人物をモデルにして創作の部分を膨らましたものがあると思うのですが、昨年の「花の生涯~長野主膳ひとひらの夢」と同様、今回の作品も、八代将軍・徳川吉宗を取り巻く様々な出来事や、人々に題材をとったものということですからより興味がわいてきます。
今回の舞台作品も、昨年の「花の生涯」と同じ斎藤雅文氏の脚本とのことですが、1961年公開の映画「八百万石に挑む男」(脚本:橋本忍)をベースにしたものと聞いています。そして、この映画の原作となっているのが柴田錬三郎の「天一坊秘聞」ということなので、原作にあたってみたいと思い、調べてみましたが絶版になっているようで、amazonや、オークションなどでも見つけることができませんでした。
*天一坊秘聞 実録時代小説 第1(偕成社 1954年) 柴田錬三郎著 (「八百万石に挑む男」原作)
*天一坊秘聞 実録時代小説 第1(偕成社 1954年) 柴田錬三郎著 (「八百万石に挑む男」原作)
それで、天一坊事件を描いている小説をチェックしてみたところ、「天一坊秘聞」の原作者である柴田錬三郎氏が書かれた「徳川太平記 吉宗と天一坊」(上・下)という作品を見つけました。
舟木さんが演じられる舞台作品の「天一坊事件」、あるいは、伊賀之亮像、天一坊像などとは、少し離れたところでの、私の勝手な興味にすぎませんが、この「徳川太平記」に登場する伊賀之亮という存在が、あまりにもシュールで面白く感じましたので、ご紹介させていただきます。
徳川太平記 柴田錬三郎 文藝春秋新社 1965 (のち文庫、集英社文庫)
柴田錬三郎(しばた れんざぶろう、1917年(大正6年)3月26日 - 1978年(昭和53年)6月30日)
日本の小説家、ノンフィクション作家、中国文学者。本名は齋藤 錬三郎(さいとう れんざぶろう)。シバレン(柴錬)という通称でも名高い。
日本の小説家、ノンフィクション作家、中国文学者。本名は齋藤 錬三郎(さいとう れんざぶろう)。シバレン(柴錬)という通称でも名高い。
歴史小説に新風を送ったことで業績は名高い。『イエスの裔』は芥川賞と直木賞の両方の候補となったが天秤にかけて直木賞を受賞し、その後選考委員となる。代表作に『眠狂四郎』『御家人斬九郎』『水滸伝』『徳川太平記』など多くがあり、戦国・幕末を扱った作品が多く、剣客ブームを巻き起こした。
山内伊賀之亮と山内伊賀之介
9月の演舞場公演「天一坊秘聞~八百万石に挑む男」のチラシや、その他の情報では、舟木さんが演じるのは「山内伊賀之亮」となっています。「徳川太平記」を流し読みしてみると上巻で登場する伊賀之亮は、「伊賀之介」となっているのです。「はてな?」と疑問を抱きつつ、読み進んでみると、この伊賀之介は、なんとも冷酷無比で、利己的で、とってもとっても「やな奴」なんです。そんなはずはない・・・舟木さんが、そんな男を演じるなんてことは絶対に有り得ない!・・・と少々ムカつきながら、さらに読み進んでいくと・・・・・・下巻で、思わぬ展開になっていくのです。
以下、物語のあらすじを、簡単に、まとめてみました。
太平の元禄時代、紀州藩次席家老の子息(実は養子)加納新之助は、次席家老の姪である多藻と契りを交わす。新之助は家康の曾孫でありながら、よんどころなき事情で、元服まで加納家に養われていたのだ。懐妊した多藻に新之助は、血筋を証明する一文と葵の紋のついた短剣を手渡す。多藻は、江戸の裏店で男の子を生む。隣家の浪人が山内伊賀之介で、多藻が産気づき、伊賀之介が産湯をつかわせる。幼児は新太郎と名づけられた。伊賀之介は、権勢を備えた武家、大商人に対する憎悪を胸中にひそめ、彼らに一太刀あびせた刹那の血ぶるいと生き甲斐にしていた。新太郎が、御落胤であると知った伊賀之介は、多藻に迫り、抵抗する多藻を誤って殺してしまう。そして、いずれ、御落胤である新太郎を利用しようとする企みを隠して、十五歳までの約束で大商人・紀伊国屋文左衛門に預けるのだった。
後に新之助は三万石の領主となり、さらに天下人にまでのぼりつめる。新之助は吉宗と改名。八代将軍の座に就いた。新之助の幼馴染みの大岡忠助は自ら願い出て、江戸町奉行となり、改革を実行する吉宗を助ける。一方、紀文が伊賀之介から預かった幼児は、成長し、天一坊と名のった。
このあたりまでが、上巻です。上巻に登場する「伊賀之介」は、最低最悪ですよね。
ところが、下巻で、登場する浪人・神矢主膳・・・あらら、主膳なのです。「花の生涯」では、長野主膳(笑)
・・・この主膳が、悪漢の山内伊賀之介を倒して、その姓名を継ぐと同時に、天一坊の後見役も引き受けることになるのです。名を伊賀亮(この小説では「伊賀之亮」ではなく「伊賀亮」です)と改名します。実は、こ
の改名にも、含みがあることが、この小説では不吉な伏線としてほのめかされています。
ところが、下巻で、登場する浪人・神矢主膳・・・あらら、主膳なのです。「花の生涯」では、長野主膳(笑)
・・・この主膳が、悪漢の山内伊賀之介を倒して、その姓名を継ぐと同時に、天一坊の後見役も引き受けることになるのです。名を伊賀亮(この小説では「伊賀之亮」ではなく「伊賀亮」です)と改名します。実は、こ
の改名にも、含みがあることが、この小説では不吉な伏線としてほのめかされています。
さて、この主膳=伊賀亮という人物は・・というと、やっと舟木さんが演じられるにふさわしい人格高潔な武人として描かれていて、「そうでしょ!そうじゃなきゃぁ・・」と大納得しました(笑)これで、ひと安心です。
「徳川太平記」では、「ワルの伊賀之介」から天下を覆す悪しき野心・野望を叩き込まれた天一坊に、伊賀亮(=主膳)が、以下のように言う場面があります。(抜き書き)
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伊賀亮
「お主、紀州候の落胤たることを、忘れるわけにはいかぬか?」
伊賀亮
「お主、紀州候の落胤たることを、忘れるわけにはいかぬか?」
天一坊
「おのが素性を隠す必要はない!其許(そこもと)は、山内伊賀之介という姓名を継いだからには、その遺志も継ぐべきだろう。小父上は、それがしが元服のあかつきは、紀州吉宗公と父子対面をさせる、と約束されていた。其許は、亡き小父上に代わって、それがしを、父上に対面させる義務ができたのだぞ!」
「おのが素性を隠す必要はない!其許(そこもと)は、山内伊賀之介という姓名を継いだからには、その遺志も継ぐべきだろう。小父上は、それがしが元服のあかつきは、紀州吉宗公と父子対面をさせる、と約束されていた。其許は、亡き小父上に代わって、それがしを、父上に対面させる義務ができたのだぞ!」
天一坊は、伊賀亮(=主膳)が忠告しようとすることを、逆に封じて、つめ寄ってみせた。
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上巻が550P、下巻が533Pという長編なので、とにかく伊賀之亮(あのムカつく伊賀之介の場面も)が登場している部分だけを、まず拾い読みしているのですが、それでも目がチラチラします(笑)
しばらく、抜き読みした部分をすこしずつでも、連載でアップしていこうと思っています。
実際の舞台の脚本も、もうそろそろ最終稿が上がってきて、本読みから立ち稽古に入っていくのでしょうね
どんな、伊賀之亮を見せて下さるか、ワクワクします。
実際の舞台の脚本も、もうそろそろ最終稿が上がってきて、本読みから立ち稽古に入っていくのでしょうね
どんな、伊賀之亮を見せて下さるか、ワクワクします。