寒気は強いものの、私の住んでいる三重県北部では、陽射しも日に日に長くのびてきて穏やかな日が続いています。ここ数日は、洗濯、布団干し日和です。散歩も気持ち良くて、九華公園のお堀の鴨さんたちも
のんびりと水面に浮いています。
さて、ほんとに久しぶりですが、「舟木一夫自作曲によせて」のシリーズがあったのを思い出したので…
大人になってからは、テレビはずっと長くほとんど観てなかったのですが、2年前に実家暮らしをするように
なってからNHKの朝ドラを「朝」ではなくて、お昼に母と一緒に観るようになりました。
今、放送されているのは、「マッサン」ですね。日本で初めて本格的なウィスキーを作った、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝とその妻をモデルにしたストーリー。年が明けて物語はいよいよ佳境に入っていくようです。
このお話の主役は「ウィスキー」?ということですから…もうお察しがついたと思いますが、今回は、舟木さんの「WHISKY-LONELY」をご紹介しますね(笑)
舟木さんの御自作というと、私ならブログのタイトルにもお借りしているように「れんげ草」がマイ・ベストなのですが、他にも胸がキュンとなるラブソングなどが、数え切れないほどあります。でも、そういったものとは、ちょっと趣を異にした「おんな唄」が「WHISKY-LONELY」です。私は、まだ残念ながらこの曲をナマのステージで聴いたことはないのですが、初めてこの曲を聴いた時、とっても衝撃を受けました。
作品としてどうのこうのというよりもまっ先に舟木さんってこんなに自由自在に唄える歌い手だったんだと、失礼ながらその歌唱表現のクオリティの高さに圧倒されました。「セリフは唄うように、歌は語るように」という表現者の心得の真髄のような言葉がありますが、舟木一夫は「語れる歌い手」である…ということに遅まきながら気付かされたのです。
舟木さんは何十年も昔、私にとって心ときめくお兄さんのような存在。子ども心にもそういう想いをそっと胸に秘めておきたいような憧れの人ではありましたが「歌い手・舟木一夫」という認識は稀薄でした。
ですから、ほんの二年ちょっと前に何十年ぶりかでそのステージの歌唱を聴いて、雷に打たれて、とにかく手に入る音源を片っ端から聴いていく中で、「巧い歌い手」だったんだということに申し訳ないほどに遅ればせながら気づいたというのが正直なところなのです。
もちろん、「絶唱」で舟木さんが最優秀歌唱賞を受賞されたのは、デビューしてわずか3年目、まだ22才になったばかりの時、しかもそれまでのレコード大賞最優秀歌唱賞受賞の歴代最年少ですから、十分に「評価」はされていたのだと思いますが「賞獲り合戦」という一面もある、その世界の「暗黙のお約束事」のような、すっきりしない空気の中での「最優秀歌唱賞」だったような印象を、当時まだ中学生だった私ですら持っていたように思います。
舟木さんご自身、デビュー3年目での「最優秀歌唱賞」は、あまりに重すぎて戸惑いを感じていらしたようですから、今となっては、まだこれからという若い歌い手にとってはある種「大人たちのご都合主義」というか、罪作りな結果になったと思わざるを得ません。
その後の舟木さんの旅路で、本当の意味で歌い手として真っ当に評価をされるべき時というのは、皮肉にも、舟木さんがおっしゃるところの「寒い時期」であったのかもしれないと、今さらながら、つくづく思う私です。「芸能界」の表舞台には姿を見せることがなかった頃の舟木さんの、あえて誤解を恐れずに云うならば「水面下」での表現者としての活動、仕事にこそ注目に値する成果があったのだと思います。
今の舟木さんのナマの歌唱で聴けるなら、どんな曲でもかまわないほど何を唄われても大満足なのですが、あえて欲張って云えば「WHISKY-LONELY」を、ぜひ聴いてみたいと思っています。
WHISKY-LONELY 作詩・作曲:上田成幸
https://www.youtube.com/watch?v=o2scFdlA-2g
(「WHITE」収録 1982年6月LP発売/1995年4月CD発売)
https://www.youtube.com/watch?v=o2scFdlA-2g
(「WHITE」収録 1982年6月LP発売/1995年4月CD発売)
めずらしく アイツめが
自分でタバコなんぞを 買いに出た
ドアを出て 10分も経ってから
置き去りの小銭入れに 気がついた
自分でタバコなんぞを 買いに出た
ドアを出て 10分も経ってから
置き去りの小銭入れに 気がついた
バカ野郎 夜中の2時に
小銭もなしで タバコが買えるか
あの野郎 出て行ったな
別れたな もどらないな……
くやしいけど 泣かないもん
酒でも飲んで 忘れるもん
あの野郎 手ぶらで出たっけ
ここよりいい部屋 見つけやがったな
バカ野郎 このあたしより
いい女なんて いるもんか
ここよりいい部屋 見つけやがったな
バカ野郎 このあたしより
いい女なんて いるもんか
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
くやしいもん 手酌だもん
ヒマになっちゃったもん 飲むしかないもん
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
くやしいもん 手酌だもん
ヒマになっちゃったもん 飲むしかないもん
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
探すなんて 似合わないもん
酔いつぶれちまえ 寝ちまえ
酔いつぶれちまえ 寝ちまえ
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
WHISKY-GRASS(くやしいもん)
WHISKY-NIGHT(手酌だもん)
WHISKY-CRY(泣かないもん)
WHISKY-LONELY(忘れるもん)
WHISKY-NIGHT(手酌だもん)
WHISKY-CRY(泣かないもん)
WHISKY-LONELY(忘れるもん)
WHISKY-GRASS WHISKY-NIGHT
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
………………
WHISKY-CRY WHISKY-LONELY
………………
1982年6月発売LP盤 ↓
他に、音源として2012年12月に発売された「WHITE」スペシャルセレクションというCDがあります。
こちらはライブ・ヴァージョンです。「29小節の挽歌」から「WHISKY-LONELY」に入っていくという構成のステージのライブ収録音源(2010年4月大宮ソニックシティホール)ですが、これがまた圧巻なのです。
下記に、舟木さんが、コンサートで、この曲についてお話しなさっている記事を併せてご紹介します。
~5daysコンサート in 京都南座(1999年7月)のトークの模様 ピンク文字が舟木さんのトーク~
日本の名歌手シリーズ 舟木一夫 風まかせ(1999年10月発刊・東京新聞出版局)より
日本の名歌手シリーズ 舟木一夫 風まかせ(1999年10月発刊・東京新聞出版局)より
「次にお聞かせするのは、多分、これはコンサートでしか入り込めないだろうというタイプの曲。中身や時間的な問題も含めていろいろあるんですが「WHISKY LONELY 」という、僕自身が「WHITE」というアルバムの中で書いたもので、だいたい10分くらいかかる作品です。お聴きいただければわかると思いますが、コンサートだからこそ入り込める作品ではないかと思います。」
彼がそう紹介した作品は、アコースティック・ギターの優しい音色、語りや眼差しが滲む歌詞、素直なメ
ロディーが心に染みてくるナンバーだ。そして、その柔らかな旋律は、やがてサウンドとともに壮大な膨らみを帯び、さらにスケールアップ。クライマックスはリズム・アップした軽快なタッチのリフレイン・ソングへと変わる。そこには、流行歌という世界とは別の、等身大の彼が描く舟木流ダンディズム、ウィスキーのように甘くほろ苦い、独自の世界観が広がっている。シンガーソングライターとしての彼の懐の深さをうかがい知ることのできる作品のひとつだ。
ロディーが心に染みてくるナンバーだ。そして、その柔らかな旋律は、やがてサウンドとともに壮大な膨らみを帯び、さらにスケールアップ。クライマックスはリズム・アップした軽快なタッチのリフレイン・ソングへと変わる。そこには、流行歌という世界とは別の、等身大の彼が描く舟木流ダンディズム、ウィスキーのように甘くほろ苦い、独自の世界観が広がっている。シンガーソングライターとしての彼の懐の深さをうかがい知ることのできる作品のひとつだ。
「今の曲を聞いてずい分長いな……なんてお思いになったでしょう。同じフレーズばっかり(笑)この曲は、10分で終わろうと思えば終われて、30分やろうと思えばできる歌なんです。これは、リフレイン・ソングというやつで、有名なのはクリスマス・ソングの「聖者の行進」があります。また、僕が中学校一年生ぐらいの時にラジオで聴いて、カルチャーショック、大ショックを受け、それが僕を軽音楽の道へ足を踏み入れさせるきっかけになったハリー・ベラフォンテという黒人のしゃがれた凄くいい声で歌う人がいまして、彼がカーネギーホールで初めてコンサートをやった時に、ライブを録ったんですね。その洋盤が日本でも発売されたんですが、その頃の洋盤というとても高くて、2400円もした。当時の大学出の初任給が1万円いくかいかないかという時代でしたから、とても買うのは大変で、僕は1ヶ月アルバイトをしてようやくそれを買うことが出来た。そのアルバムはいまだに大切に持っていますが、そのステージのフィナーレで「マチルダ」という曲を、お客さんと延々、15分ぐらいやりとりしていて、それが大変素晴らしかった。そういう意味では、こういったリフレイン・ソングというものをコンサートで時々楽しんでもらうのも、うどんに唐辛子が入ったみたいでいいかな……なんて思っています。」
それにしてもお酒が飲めないという舟木さんが「お酒」を小道具にした作品を何曲も作っていらっしゃるのも興味深く思います。落語でも、「酒飲み」「酔っ払い」を主役にした噺がたくさんありますが、お酒を全く飲めない噺家さんが、実に見事な酔っ払いぶりを見せてくださるのに驚かされますが、それと共通するものがあるのでしょうね。同じように「ラブソング」も、実際には経験していないシチュエーションであっても、イマジネーションの扉を開けて、その世界を鮮烈に描き出す感性を備えた人が優れた表現者となれるのかも知れません。
下記の2曲はいずれも アルバム「29小節の挽歌」収録(1980年1月発売)
どうせオン・ザ・ロック 作詩・作曲:舟木一夫
https://www.youtube.com/watch?v=FlkIRTw9qrk
https://www.youtube.com/watch?v=FlkIRTw9qrk