昨日も午前中、母が点滴をするので、病院に付き添って行ってきました。待っている間に病院に置いてある新聞を読んでいたら、竹内浩三さんの詩や生涯をドキュメンタリー映像として制作したという大学生たちの記事を見つけました。
若い人たちが、こうして「負の歴史」からなにかを学び取ろうとしていることがとても頼もしく、若者たちに同じ轍を踏ませることは、何としても避けなくてはならないと思いました。「いつか来た道」への第一歩を踏み出してしまったような戦慄を覚える今日この頃ですので、日記に記させていただきました。
以下は昨年の8月15日「終戦の日」の日記です。竹内浩三さんについても記しています(参考)
終戦の日の「絶唱」 八月十五日 多くの犠牲の上に、この国の歴史があらたに始まった日を想って 合掌
骨のうたう 竹内浩三
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
遠い他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
白い箱にて 故国をながめる
音もなく なんにもなく
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や女のみだしなみが大切で
骨は骨 骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨はききたかった
絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
白い箱にて 故国をながめる
音もなく なんにもなく
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や女のみだしなみが大切で
骨は骨 骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨はききたかった
絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
ああ 戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
こらえきれないさびしさや
国のため
大君のため
死んでしまう
その心や
兵隊の死ぬるや あわれ
こらえきれないさびしさや
国のため
大君のため
死んでしまう
その心や
上記サイトより転載させていただきました。 7月19日(日)付
比で戦死 詩人・竹内浩三の叫び 「日本が見えない」今も響く
出征前の竹内浩三(中)。左は当時4歳の庄司乃ぶ代さん=庄司さん提供 |
「オレには日本が見えない」。太平洋戦争の真っただ中、三重県伊勢市出身の竹内浩三は、戦争の意味を問い、詩に書き続けながら二十三歳でフィリピンの野に散った。めいの庄司乃ぶ代さん(76)=津市=は、自衛隊を紛争地に派遣することを可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法案を是が非とも成立させようとする政府の姿を見ながら、浩三兄ちゃんの詩をしきりに思う。「戦時中に書かれた言葉に今でも共感する。皮肉ですよね」
二十一日から八月三十日まで、名古屋市名東区の「戦争と平和の資料館 ピースあいち」で企画展「竹内浩三の詩とその時代」が開かれる。
浩三は伊勢市の呉服店に生まれた。十一歳の時に母が病死してから、姉で、庄司さんの母松島こうさん(故人)が母親代わりに。いたずら好きで天真らんまんだった明るい少年は、中学時代には風刺漫画雑誌を自主発行し、「僕は軍歌が大嫌いです。あんなヤバンな歌」と堂々と書いた。
戦死した詩人竹内浩三について話す、めいの庄司乃ぶ代さん=津市で(長塚律撮影) |
映画監督を志し、東京の日本大映画科へ入学した後は映画館や喫茶店、古書店に入り浸り、「空のように自由でありたい」と奔放に生きた。
子どもと遊ぶのも好きで、庄司さんをかわいがった。膝の上に抱っこしては、敬愛していた宮沢賢治原作の映画「風の又三郎」の主題歌を歌ってくれた。「バリトンの低い声で耳に心地よかった」のを覚えている。
浩三が出征したのは一九四二年で、庄司さんが四歳のころだった。
詩は、愛読書のページの隙間や姉への手紙などに書かれた。入隊後、地元の陸軍部隊を経て茨城県つくば市の連隊へと転属。そこでも、昼夜延々と繰り返される演習の合間に、こっそりと手帳に「筑波日記」を書いた。四四年六月十九日のページにはこうある。
「おれだって、人に負けないだけ、国のためにつくすすべはもっている。自分にあった仕事をあたえられたら、死ぬるともそれをやるよ。でも、キカン銃かついでたたかって死ぬるというのは、なさけない気がするんだ」
六六年に三重県松阪市の戦没兵士の手紙集に「戦死やあはれ」と書いた詩「骨のうたう」が掲載され、世間の注目を浴びるようになった浩三。この国のあり方が問われている今だからこそ、庄司さんは多くの人に読んでほしいと願う。
衆院を通過した安保法案は、人々を戦争に近づけるものだと思う。「日本をおかしくしてしまう。廃案にしてほしい」
最近、よく思い出す浩三兄ちゃんの詩の一節がある。「戦争は悪の豪華版である。戦争しなくても建設はできる」
(社会部・長田弘己)
絶唱 作詩:西條八十 作曲:市川昭介 (1977年再吹込み盤)
結ばれて 引き裂かれ 七年を西東