視界に花の姿が入ってくるより先に、嗅覚が見つけてくれるのが金木犀と沈丁花。今年も、やっと沈丁花の香りがどこからともなく漂ってくる季節になりました。町内のお宅の玄関先の沈丁花です。
そぞろにも知らぬ世界の匂ひする臙脂の色の沈丁花かな 与謝野晶子
~「女学生の友」(1967年1月号)掲載の舟木さん関連の記事 その1~ のつづきの記事です。
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/71047393.html
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ひたむきな青春/舟木一夫の一週間
「女学生の友」(1967年1月号)
にがての飛行機で巡業へ
★久保くんとしんみり話す
11月×日
九時起床。
寒い。天気もあまりさえない。
昨夜、いや今朝がた、おかあさんとよもやま話をしているうちに、舟木くんは「おふくろ孝行」を思いたった。伊東の近くにとてもよい温泉がある。「そこなんかいいと思うけど。」と彼が提案、おかあさんもその気になって、今日、さっそく実行することになった。舟木くんはおかあさんを東京駅まで送る。時間があったので、銀座で車をとめて、ネクタイとくつしたを買う。舟木くんは、見て気にいれば、その場でパッと買う。四谷のプロダクションでスケジュールの打合せをすませたあと、TBSスタジオへ。
寒い。天気もあまりさえない。
昨夜、いや今朝がた、おかあさんとよもやま話をしているうちに、舟木くんは「おふくろ孝行」を思いたった。伊東の近くにとてもよい温泉がある。「そこなんかいいと思うけど。」と彼が提案、おかあさんもその気になって、今日、さっそく実行することになった。舟木くんはおかあさんを東京駅まで送る。時間があったので、銀座で車をとめて、ネクタイとくつしたを買う。舟木くんは、見て気にいれば、その場でパッと買う。四谷のプロダクションでスケジュールの打合せをすませたあと、TBSスタジオへ。
「歌謡ベストテン」のリハーサルと本番。その控え室へひょっこり久保浩くんがあらわれる。そえ木をした左手がいたいたしい。巡業先で自動車事故をおこしてけがをしたのだ。
「舟木さん、すみません、心配かけて。」
「バカだなぁ!おれがこんなに心配するくらいなんだから、久保ファンがどれくらい心配してるか、わかんないぞ!まあ、すわれよ。」
いがいと調子は強かった。
久保くんはプロダクションもレコード会社もちがうけれど、舟木くんとよく気が合うらしい。久保くんはこの日、たまたまTBSのほかの番組で歌いにきていた。舟木くんがきているときいて、とんできたのだった。だだっぴろい控え室でオトコの子ふたりがシュンとして向き合っている。男の友情が一本の糸のようにふたりの心と心にかよう。久保くんが帰る。舟木くんの仕事は深夜に終わった。
就寝時間は三時近くになる。
★明星ゴールデン・ショーに出演
11月×日
今日は寝起きがわるい。
おてつだいさんのきぬよさんが何度もおこしたが、ベッドからぬけだしたのは十二時をすぎていた。
かるく「きしめん」を食べる。いつもとちょっと味がちがう。ミッちゃんに聞いたら、
「あじつけはおとうさんがなさったんですよ。」
そうか、今日はおふくろが温泉へいっていて、いないんだ…。
舟木くんは、うどんをすすりながら、今日のような日は、やはりぽつんと、胸のどこかに、小さな空どうができているのを感じる。
いそいでNTV「明星ゴールデンショー」のスタジオへ出かける。
カラー番組なので、照明のライトがまぶしいくらい。スタジオの中はじっとしていても汗ばんでくる。
レギュラーは由美かおる、榊原ルミちゃんのみなさん。今日のストーリーは舟木くんふんする「舟木先生」が東京からへき地の小学校へ転任になってくる話。舟木くんは「里の秋」と「雨の中に消えて」を歌う。
ふたりづれのファンがスタジオの入り口でジーッと舟木くんの歌や芝居に目をこらしている。カメラももってきている。「女友」のH記者がそのカメラで舟木くんのスナップをとってあげている。
「学校どこなの?今日はお休み?」
「中三です。学校の名前はヒミツ。今日は文化祭のふりかえ休校なんです。」いきをはずませてこたえながら、目ではジーッと舟木くんを追っている。
おてつだいさんのきぬよさんが何度もおこしたが、ベッドからぬけだしたのは十二時をすぎていた。
かるく「きしめん」を食べる。いつもとちょっと味がちがう。ミッちゃんに聞いたら、
「あじつけはおとうさんがなさったんですよ。」
そうか、今日はおふくろが温泉へいっていて、いないんだ…。
舟木くんは、うどんをすすりながら、今日のような日は、やはりぽつんと、胸のどこかに、小さな空どうができているのを感じる。
いそいでNTV「明星ゴールデンショー」のスタジオへ出かける。
カラー番組なので、照明のライトがまぶしいくらい。スタジオの中はじっとしていても汗ばんでくる。
レギュラーは由美かおる、榊原ルミちゃんのみなさん。今日のストーリーは舟木くんふんする「舟木先生」が東京からへき地の小学校へ転任になってくる話。舟木くんは「里の秋」と「雨の中に消えて」を歌う。
ふたりづれのファンがスタジオの入り口でジーッと舟木くんの歌や芝居に目をこらしている。カメラももってきている。「女友」のH記者がそのカメラで舟木くんのスナップをとってあげている。
「学校どこなの?今日はお休み?」
「中三です。学校の名前はヒミツ。今日は文化祭のふりかえ休校なんです。」いきをはずませてこたえながら、目ではジーッと舟木くんを追っている。
「舟木くんのどこが好き?」
「ぜんぶ!!でもとくに舟木さんのハナバシラがスーッとしているところが大好き!」
ふたりでうなずきあっている。「舟木くんがここにいることは、なんで知ったの?」
「けさ世田谷のおうちへいったの。そしたらここにいらっしゃるって教えてくださったんです。」
うれしそうに、ひとみをかがやかせる。
「ぜんぶ!!でもとくに舟木さんのハナバシラがスーッとしているところが大好き!」
ふたりでうなずきあっている。「舟木くんがここにいることは、なんで知ったの?」
「けさ世田谷のおうちへいったの。そしたらここにいらっしゃるって教えてくださったんです。」
うれしそうに、ひとみをかがやかせる。
榊原ルミちゃんの「舟木観」は、
「あのひと、とっても清潔で、いつもキチーンとしてる。それにとってもユーモアがあるからステキです。」録画はバラどりであった。スターの都合であちこちバラバラにとってあとで編集するわけだ。舟木くんが解放されたのは八時すぎ。
就寝十一時。
「あのひと、とっても清潔で、いつもキチーンとしてる。それにとってもユーモアがあるからステキです。」録画はバラどりであった。スターの都合であちこちバラバラにとってあとで編集するわけだ。舟木くんが解放されたのは八時すぎ。
就寝十一時。
★にがての飛行機で巡業へ
11月×日
六時起床。
「ねむたいのなんのって…。目をとじたら立ったままでグーグーねむれそうな気持ちだ。天気はどうかな?やあ!わりとすっきりした秋晴れだ!」
天気を気にしていたのは、今朝、これから飛行機に乗るからだ。行き先は、第一日目が福山だ。舟木くんの飛行機ぎらいは有名だった。でも巡業のスケジュールがたてこんでくるときらいきらいとばかりもいってられない。それで今日は、ともかく大阪まで飛行機でとぶことになった。
七時半。舟木くんは、度のないめがね、うすいくさ色のチェックのコートというさっぱりしたスタイルで羽田空港に到着。
「ねむたいのなんのって…。目をとじたら立ったままでグーグーねむれそうな気持ちだ。天気はどうかな?やあ!わりとすっきりした秋晴れだ!」
天気を気にしていたのは、今朝、これから飛行機に乗るからだ。行き先は、第一日目が福山だ。舟木くんの飛行機ぎらいは有名だった。でも巡業のスケジュールがたてこんでくるときらいきらいとばかりもいってられない。それで今日は、ともかく大阪まで飛行機でとぶことになった。
七時半。舟木くんは、度のないめがね、うすいくさ色のチェックのコートというさっぱりしたスタイルで羽田空港に到着。
待合室のすぐ近くにある本屋へとびこんで「あッ、愛読書があった。」と少年サンデーを買う。
←こちらの2枚の写真は、「明星」掲載↓
ひきかえしてくる途中で、バッタリあったのが久保浩くんと東山明美さん。久保くんがおどけて、
「舟木さん飛行場にナニしに…?」
「モチロン、大阪までとぶんだよ。ほんとは汽車のほうが好きなんだけど、スケジュールの都合でしかたなくね。それより君はいったいどこへいくの?」
「ぼくは全日空で鹿児島へ行きます。」
「残念だな。おれは日航なんだ。おたがいに無事でいこうよ。」
いい終わるやいなや舟木くんは、さっきの本屋へとってかえす。
「サザエさん」を二冊かかえてきて、ふたりにプレゼントする。
「事故」で内心しょげている久保くんへの、さりげないあたたかいおもいやり…。
三人はロビーで手をふって別れた。
八時ジャスト、「舟木便」はごう音をたてて滑走路から舞い上がった。
「舟木さん飛行場にナニしに…?」
「モチロン、大阪までとぶんだよ。ほんとは汽車のほうが好きなんだけど、スケジュールの都合でしかたなくね。それより君はいったいどこへいくの?」
「ぼくは全日空で鹿児島へ行きます。」
「残念だな。おれは日航なんだ。おたがいに無事でいこうよ。」
いい終わるやいなや舟木くんは、さっきの本屋へとってかえす。
「サザエさん」を二冊かかえてきて、ふたりにプレゼントする。
「事故」で内心しょげている久保くんへの、さりげないあたたかいおもいやり…。
三人はロビーで手をふって別れた。
八時ジャスト、「舟木便」はごう音をたてて滑走路から舞い上がった。
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つらい思いに 耐えかねて
ひとりはるばる 来たんだね
話してごらん この僕に
話してごらん この僕に
きいてあげよう なにもかも
濡れたその目が かわくなら
ひとりはるばる 来たんだね
話してごらん この僕に
話してごらん この僕に
きいてあげよう なにもかも
濡れたその目が かわくなら
(セリフ)
そうか そうだったのか
君のつらいきもちは
ぼくにもよくわかった
そうか そうだったのか
君のつらいきもちは
ぼくにもよくわかった
つらいきもちがなおるのなら
泣くだけ泣きたまえ 話したければ
話しを聞いてあげよう
しかし彼だって きっと悲しんでるよ
ぼくにもおなじ おもいでがある
好きで好きでたまらなかった人と
別れたつらいおもいでがネ…
けれど ぼくは 泣かなかったぞ
さあ 元気を出したまえ
さあ 笑って 元気をだして
泣くだけ泣きたまえ 話したければ
話しを聞いてあげよう
しかし彼だって きっと悲しんでるよ
ぼくにもおなじ おもいでがある
好きで好きでたまらなかった人と
別れたつらいおもいでがネ…
けれど ぼくは 泣かなかったぞ
さあ 元気を出したまえ
さあ 笑って 元気をだして
君のこころを 傷つけた
そんな人なら 忘れるさ
信じてごらん この僕を
信じてごらん この僕を
恋に破れた 思い出は
みんな誰にも あるんだよ
そんな人なら 忘れるさ
信じてごらん この僕を
信じてごらん この僕を
恋に破れた 思い出は
みんな誰にも あるんだよ