(2006年7月 「船頭小唄」カップリング)
ちょっと灰色がかったような群青色…と言ったらいいでしょうか?落ち着いたトーンのスリーピースに白のシャツで登場。この日は譜面台を横に置いての歌唱。
1ヶ月間どうもありがとうございました。芝居は例のごとしで(笑)
千秋楽…こういう時は何を歌うかって、別に何でもいい…(笑)
でも多少は…というところもある。2、3曲ずつをテーマを決めてくっつけてつなげます。
とりあえずここは3曲、「星」でいってみます。
星は何でも知っている 作詩:水島哲 作曲:津々美洋
(原曲:平尾昌晃)
星影のワルツ 作詩:白鳥園枝 作曲:遠藤実
(原曲:千昌夫)
星のフラメンコ 作詩・作曲:浜口庫之助
(原曲:西郷輝彦)
僕らの世代のヒット曲…時代というのがあるんですよね。いつも言うんですが学生時代の友達とはちょっと違う、一緒に青春時代に仕事でお互いに負けないようにと競った仲間というのは特別の気持ちがある。
ここは、「しろ」~なにか客席の反応があったからでしょうか、黒、白のしろじゃなく「城」~と補足する舟木さん。
約束もない 恋ならば
また会うことも かなうまい
しあわせいずこ 荒城に
春高楼の 歌哀し
みどりの髪に 矢絣の
紫似合う 君はなく
崩れて残る 荒城に
おもかげ草は 今も咲く
月日はうつる 人の世に
変わらぬ姿 月ばかり
待つ人もない 荒城の
草笛さびし 恋哀し
古城 作詩:橋掬太郎 作曲:細川潤一
(原曲:三橋美智也)
松風さわぐ丘の上
古城よ独り何偲ぶ
栄華の夢を胸に追い
ああ 仰げば侘(わ)びし天守閣
崩れしままの石垣に
哀れをさそう病葉(わくらば)や
矢弾(やだま)のあとのここかしこ
ああ 往古(むかし)を語る大手門
甍(いらか)は青く苔(こけ)むして
古城よ独り何偲ぶ
たたずみおれば身にしみて
ああ 空行く雁(かり)の声悲し
「あゝ荒城の月哀し」、これは暗いですね。「荒城の月」を流行歌で作れないか、という発想でできたんですが、流行歌のヒット曲のコピーというのは当たり前のことですから、あげればキリがない。「影を慕いて」からきてる「悲しい酒」、これは作曲が同じ古賀先生だからいいんですが…と「コピー」作品でも成功してるもの、そうじゃないものがあるというような感想をおっしゃっていました。
次のテーマは、「すすき」
昭和枯れすすき 作詩:山田孝雄 作曲:むつひろし
(原曲:さくらと一郎)
譜面台を、舞台下手に移動させてから、この1ヶ月、色々お世話になりました村木弾。お客様にお礼を…3月4日から昼の部で皆様の前で歌を歌わせていただきました。デビューした以上はなんとかヒットにしたいと。昨日までで1140枚、今日で2000枚になるかと(笑) それでは「ござる~GOZARU~」と村木さんを紹介。この日は舞台の下手から登場した村木さん。舟木さんとのトークも兼ねて、客席に御礼の御挨拶がありました。
村木弾さん
ござる~GOZARU~
この日は舟木さんはステージ衣装の着替えはなくて、村木さんが歌ってる間も、ステージの上手のバンドの脇あたりの目立たないところにさりげなく立って、手拍子も小さくされながらずっと村木さんの歌唱を聴いていらっしゃいました。村木さんが下手に引っこんで。再び、舟木さんがステージ中央に。
田舎の教会 作詩:舟木一夫 作曲:川崎弘
~お芝居の出演者総出のサインボール投げ
「田舎の教会」は1977年頃からスタンディングなどで度々歌唱されているファンの間では人気の曲。この日はスタンディングは「なし」でした。
皆さんが胸に舟木さんのイニシャル「F」と書かれたお揃い黒のTシャツでボールを手にして登場されサインボール投げ。
舟木さんが稀世さん、葉山さん、文童さん、かずきさん、与一さんにマイクを向けて皆さん一言ずつ今回のお芝居に出演されての感想を述べられました。
皆さんがそでに戻り、後半のステージへ
ここからコロッと雰囲気を変えていくんですが…とおっしゃってから再び、先ほどの村木弾さんについて…
いつもは彼が歌っているときは僕は着替えをして聴いてたんですが、ステージで聴くと違います。初日あたりと比べると段違いにいい!皆さんのおかげですね。本当にありがとうございました。この先は自分のコンサートを開けるようになってくれたらと思ってます。
ここからは「霧」です。
霧子のタンゴ 作詩・作曲:吉田正
(原曲:フランク永井)
むせび泣く 泣く~泣く~泣く~泣く
細い汽笛がながれ行く 北への旅路
ながれ行く 追いすがる
あの星だけど まだ遠い まだ遠い
さいはての 霧の中
夜の町 町~町~町~町
いつも二人で 幸せを 誓ったけれど
さうならも 告げないで
夜霧に消えた あの人よ あの人よ
どこにいる どこに待つ
今は 夢 夢~夢~夢~夢
それを知りつつ やってきた 終着駅へ
思い出を 呼んだけど
つめたい町の 薄灯り 薄灯り
まぼろしは 北の果て
三つ目のは船村先生の作品ですが力がありますね。先生に、なんで僕の歌は高い(キイの高い曲)んですか?と聞いたら「あんたの高い声が好きだから…」それだけで終わり(笑)
まあ作品を作る方はいろんな資料など集めて、歌い手の個性を見て…ということなんでしょう。 さてここは「夢」
夢ん中 作詩:阿久 悠 作曲:森田 公一
(原曲:小林旭)
熱き心に 作詩:阿久悠、 作曲:大瀧詠一
(原曲:小林旭)
悲しい夢に、明るい夢…同じ夢でもこんなにテーマが違うということです。
ここから先は持ち歌で、テーマなんてのはありません(笑)
風、好きに吹け~迷夢本望 (1995年9月)
ありふれた 明日葉(あしたば)の
花揺れて いつになく
佇(たたず)んで 振り返る 足跡に
愛(いと)しさと懐(なつ)かしさ
男ひとり 生きてみれば
想い通りと 想い違い
想い過ごしと 想いの外の
不揃いな 捩(よじ)れた道の ほろ苦さ
今日という 残りの日々の
初めての時
抱え込む 右手極楽 左手地獄
泣き笑い 何事か来い 何事か去れ
夢を行く 迷い本望 風好きに吹け 我知らず 愛しては
世忘れの 悦びと
うらはらの 苦しみに
傷跡は 密やかに語り歌
男ひとり 生きてみれば
夢の見過ぎと 夢の陰り
夢見定めず 夢捨て切れず
嘘真 迷いの夢の 綴れ折り
今日という 残りの日々の
初めての時
抱え込む 右手極楽 左手地獄
泣き笑い 何事か来い 何事か去れ
夢を行く 迷い本望 風好きに吹け
迷い本望 風好きに吹け
*新橋演舞場公演「野口雨情ものがたり」でも舟木さん扮する雨情が歌っていますね。
ららばい 作詩:藤公之助 作曲:大野真澄
(1979年発売 ATG映画「青春PARTⅡ」のテーマ)
たとえ傷つき 泥にまみれて
負けたって いいじゃないか
何もしないで ため息ついて
わけ知り顔するよりは
若さにまかせ
しゃにむに 生きてみたよ
壁にぶつかり 深傷(ふかで)負うたび
自分で傷口 癒してきたのさ
ほっといてくれ 世話などやくな
そんな寂しさが
なぜか 好きさ 俺は……
口を結んで 水面(みなも)見つめる
釣り人の 孤独じゃなく
汽車の座席に 身を沈めてる
旅人の孤独じゃなく
*俺には俺の
この生き方が似合う
行きつ戻りつ 戻りつ行きつ
幸せなんかにゃ 縁はないのさ
それでもいいと お前は言った
ついてくる気かい
こんな こんな 俺に……
*くりかえし
海辺づたいの国道を
どこまで走ると
夜が明けるのか
どんなにわずかな愛だって
忘れるためには車がいります
西海岸をどこまでも
走り続ける車がいります
でも私には歌がある
蒼ざめた夜の中で
ひとりで歌える歌がある
逢えるあてさえない人に
さよなら言うように星が流れる
どんなに短い人生も
生きてくためには涙がいります
*西海岸をあてどなく
風にまかせる涙がいります
でも私には歌がある
蒼ざめた夜の中で
ひとりで歌える歌がある
(*くりかえし)
~アンコール
くちずさむあの歌
声も途切れて
冷たい時刻(とき)をもてあます
淋しさばかりつのる日々
心の扉 錆びついた鍵に
ふと悲しみ揺れるとき
ひとり捜すあなたの暖もりを
還らない ほほえみを
この胸にあるのは
愛の傷だけ
それでも明日に夢をかけ
都会の冬を生きている
独りの目覚め 晴れすぎた朝に
ふと涙をみたときは
捨てることもできないあなたの
想い出に うずもれる
寒さに今はふるえるばかり
でもいつかは新しい
愛が生まれ
すべては変わるさ
ある晴れた日の朝に
千秋楽というのは、どんな公演でもチケットを手に入れるのが、たいへんなんですが、舟木さんの長期公演の千秋楽は、とりわけ人気があって毎回、チケット発売と同時に完売ですが、その理由は、先ずは第一部のお芝居で、舟木さんが、仕掛けるサプライズですね。そして、それ以上に、楽しみなのが、千秋楽ヴァージョンコンサート。いったいどんな歌を聴かせていただけるのか、毎回、ワクワクしている私です。
今回のテーマは、「星、城、すすき、霧、夢」というくくりで、それぞれチョイスしてくださいました。
「星は何でも知っている」、「霧子のタンゴ」、「古城」…特にこの3曲を、ワンステージの中で並べることができるということに、あらためて舟木さんの歌い手としての守備範囲の広さをしみじみ感じました。
原曲の歌い手の方は、それぞれ平尾昌晃さん、フランク永井さん、三橋美智也さん。う~ん、三者三様に全く個性の異なる昭和の代表的なスター歌手です。これってスゴクないですか?しかも、どの歌もすべて、舟木一夫という個性の中に、ナチュラルに取り込んでいらっしゃるのですから唸るしかない…
そして、ラストブロックの3曲、とアンコール曲、ここでは、勿論、舟木さんファンを酔わせる「持ち歌」でその本領を余すところなく発揮して舟木ワールド全開!
夜の部のコンサートの後半で歌われた井上陽水さんの「リバーサイドホテル」も、難解な詩でしたが、持ち歌である「風、好きに吹け~迷夢本望~」も、違った意味で、小椋佳さんらしい捻りの効いた詩で何度か聴き直さないと意味わからへん!っていう感じですが、それだけにじっくり聴けば味わいのある作品だなぁと今回、久々に舟木さんのナマのステージでの歌唱を聴いて感じました。
「ららばい」「西海岸」、そしてアンコールでは「晴れ過ぎた朝に」
このあたりは、私は、CD音源では、何度も聞いてますが、今の舟木さんの声で聴けるのは、とっても感激です。この三曲も、あらためて詩を並べてみると、さらにグッときます。若い頃の音源の声も素敵なのですが、今の舟木さんは、「歌う」から「語る」という雰囲気になってこられているような気がします。若い頃から、作品の詩の世界の読み解きが秀でていらしたと常々思っていますが、年を重ねて、さらに、詩の世界の深いところの水脈を掘り当てて、汲みあげるような表現力を身につけてこられたということなのでしょうね。
聴く側の私たちも、きっと若い頃には気づいていなかった歌の核心部分にカチンと触れることができるような年令になったのかも知れません。そういう意味でも、デビュー時代や二十代の頃のヒット曲も懐かしくていいのですが、今回の「ららばい」「西海岸」「晴れ過ぎた朝に」などのビミョーな「人生の季節」の頃の曲も、これからのステージで聴かせていただけたら新鮮な感じで楽しませていただけるんじゃないかと思いました。今回も舟木さんのステキなチョイスで大満足の千秋楽コンサートでした。