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Channel: 舟木一夫の世界~れんげ草の咲くさんぽ径~
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『陽射し・旅人』あの頃の舟木さん・その13「初恋 舟木一夫抒情歌謡をうたう」再び(上)

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『陽射し・旅人』あの頃の舟木さん・その12~「初恋 舟木一夫 抒情歌謡をうたう」
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/68666186.html
上記のタイトルでブログを掲載したのは、昨年の10月です。この時は、LPレコード盤のアルバムを手に入れていたのですが、一部に針飛びがあって、どうしても聴きづらかったので、その後復刻盤のCDも購入しました。音質は、レコードとはiいくらか違うものの聴きやすくて、無駄にはなりませんでした。また、オリジナル盤LPの解説とは異なった切り口の解説も付いていました。日本の抒情歌謡が生まれた時代背景や、戦争も含めた歴史の流れの中で「抒情歌」がどうように変遷していったかなどが、やや論文的で堅い文体ではあるのですがわかりやすく記されていますので、ご紹介します。ちょっと長いので前半と後半のふたつに分けて掲載させていただきます。
イメージ 1
「初恋 舟木一夫 抒情歌謡をうたう」の各発売年とその時代の舟木さん。
オリジナル盤(1971年12月発売)
*おそらく舟木さんにとって精神面でドン底にいらした時期かと思われます。
オリジナル盤(1974年6月再発売)
*一時活動休止の後、結婚、新たな旅立ちへの時期でしょう。
CD復刻盤発売(2003年7月発売)
*30周年を機に快進撃が実を結び完全に復活。「同世代」との順調な旅路へ。
 
このアルバム「初恋~舟木一夫 抒情歌謡をうたう」が三度にわたって時を移して発売されている事実は、舟木さんが昭和歌謡史の中で「抒情歌の歌い手である」と揺るぎない評価で広く大衆に認められていることの証となっているのだと思います。しかも、三度目のCD復刻盤は、1971年のオリジナル盤の発売から30年以上を経た後のことです。願わくば、2003年盤のCDでは新たに吹き込みをしていただきたかったというのが正直なところですが・・・
アルバムのタイトルに掲げられている「初恋」は、舟木さんにとって、最後の紅白歌合戦出場の際に歌唱した曲となりました。(1992年に21年ぶりの「高校三年生」歌唱での出場は除いています)
 
以下、大倉明氏著の「青春賛歌」から引用させていただきます。
~(1971年)大晦日の「NHK紅白歌合戦」では、9番目に島崎藤村の「初恋」を歌った。この歌は舟木が数年前に企画したもので、新しいディレクターに「いよいよ困った時には中ヒットが狙えるものがあるよ」と温存していた。それを出さざるを得ない状況になっていたのだが、舟木の予言通り最後のヒット曲となってしまった~
 
このような曰くのある歌が「初恋」であることを思えば、舟木一夫という歌い手が「人気」と言う点において
ピークにあった時期の終焉に立ち会い、ひとりの歌い手が大多数の大衆の前に立つ表舞台から姿を消していくのを見送ったのが「初恋」であったといってもいいのかもしれません。そして、それが「日本の抒情」を象徴する歌であったことは、私としては、今にして思えば、「有終の美」を飾ったのだと十分に得心がいくものです。
 

「初恋~舟木一夫 抒情歌謡をうたう」CD復刻盤   解説(池田憲一)
 
イメージ 2日本近代詩における抒情の形成は、島崎藤村の「若菜集」に始まる。それは独歩を理論的支柱にした六人の合作詩集「抒情詩」より四ヶ月ほどおくれた明治30年8月に、春陽堂から刊行されたが、そのみずみずしい感情の流露と平易な言葉の新しい発見とは、新体詩運動から生まれたものを、詩の領域まで昴めたものであった。
その後、自然主義文学の抬頭は、そこにもりこまれた浪漫主義の色を薄め、川路柳虹を中心とする口語自由詩が論壇を覆ったが、やがて再び、北原白秋の「思い出」、佐藤春夫「殉情詩集」を頂点とした抒情の再生と復活が行われる。それは、短歌と詩の中間形態ともいえる感傷性を含んだ浪漫的情感に彩られた抒情小曲を中心としたものである。
歌謡詩の初期を開拓した西條八十、大木惇夫といった人々は、この影響下にあった。昭和期とともに、レコード企業が新しい発展をとげたとき、歌謡曲は流行小唄とよばれたように、その本質を社会現象の風俗描写と、現実からの逃避においたがために、抒情歌はその中心的位置をもたず、むしろ、日清、日露戦争期のいくつかの軍歌の中に抒情歌謡の要素を有し、唱歌に近づいてゆくという宿命的な遊離をもってスタートした。それがひとつの歩みよりをみせたのは、皮肉なことに、国家的要請をその背後にもつ、NHKの「国民歌謡」においてであった。
昭和11年6月1日、「日本よい国」で始まったこの啓蒙的音楽活動は、藤村の「椰の実」を東海林太郎に、惇夫の「夜明けの唄」を奥田良三に、有明の「牡蠣の殻」を東海林太郎に、といった風に抒情歌謡の確立を萌芽させるかにみえたが、やがてそれは、新聞社の募集歌や関係官庁の選定歌にすりかわってしまう。
考えてみれば、抒情の本質を支えるものは、青春の息吹であり、詩人のもつ内的情緒の発現にあり、それは自我の確立を前提とするものであるが故に、戦争体制の一環として行われた文化統制の中から生まれるべくもなかった。いま、生田春月の「相寄る魂」を再読しながら、その中に描かれた春夫の「殉情詩集」出版記念会であろうと想像される中巻の一節で、園子が詩集の一篇を歌うシーンを意味深く感じるのである。韻律をふんだ抒情詩は、その必然的要請として歌われるべき音楽的要素を持ちながら、日本の歌謡曲が、音楽取調所以来、それとある意味で無縁の場所に育ち、そのため、真の意味の抒情歌謡の確立をなし得なかったことを・・・。
歌謡曲における抒情は、感傷を軸として時により、メロドラマの主題歌までもその中に含めなければならなかった。というより、それが抒情歌謡というものの主流となっている。
戦後、「ラジオ歌謡」のジャンルから、いくつかの本当の意味での抒情歌謡が生まれ育ち、愛唱されたことは記憶に新しいが、こうして改めてふり返ってみれば、その形成までに長く苦しい九十九折りの道程を歩んできたのである。
 
~「解説文」の後半が、まだ続きますが、(下)でご紹介します~
 
イメージ 3初恋  作詩:島崎藤村 作曲:若松甲 
http://www.youtube.com/watch?v=IXG62cIumrI
 
 
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
 
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
 
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
 
*以下は歌唱されていません
 
林檎畠の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
 

イメージ 4惜別の唄  作詩:島崎藤村 作曲:藤江英輔
http://www.youtube.com/watch?v=hqdVvt5FH1E
 
遠き別れにたえかねて
この高殿に登るかな
悲しむなかれ我が友よ
旅の衣をととのえよ
 
別れといえば昔より
この人の世の常なるを
流るる水を眺むれば
夢はずかしき涙かな
 
君がさやけき目のいろも
君紅のくちびるも
君が緑の黒髪も
またいつか見んこの別れ
 
 
 
 
*以下は歌唱されていません
 
君の行くべきやまかわは
落つる涙に見えわかず
袖のしぐれの冬の日に
君に贈らん花もがな
 

さすらい 作詩:西沢爽 作曲:植内要(採譜)狛林正一(補曲)
http://www.youtube.com/watch?v=pHu4NnxRXLs

イメージ 5夜がまた来る 思い出つれて
おれを泣かせに 足音もなく
なにといまさら つらくはないが
旅の灯りが 遠く遠くうるむよ
 
知らぬ他国を 流れながれて
過ぎてゆくのさ 夜風のように
恋に生きたら 楽しかろうが
どうせ死ぬまで ひとりひとりぼっちさ
 
あとをふりむきゃ こころ細いよ
それでなくとも 遥かな旅路
いつになったら この淋しさが
消える日があろ 今日も今日も旅ゆく
 
北帰行   作詩・作曲:宇田博  
http://www.youtube.com/watch?v=ynmz981FF2k(2曲目)
 
窓は夜露に濡れて
都すでに遠のく
北へ帰る旅人ひとり
涙流れてやまず
 
夢はむなしく消えて
今日も闇をさすろう
遠き想いはかなき希望(のぞみ)
恩愛我を去りぬ
 
今は黙して行かん
なにをまた語るべき
さらば祖国  愛しき人よ
明日はいずこの町か

(補足):原曲は、宇田氏が母校である旅順高等学校の在校中に作った寮歌だそうです。
 
 
 
北上夜曲 作詩:菊地規 作曲:安藤睦夫
http://www.youtube.com/watch?v=GomMTnOI1Hs

イメージ 6匂い優しい 白百合の
濡れているよな あの瞳
想い出すのは 想い出すのは
北上河原の 月の夜
 
*二番と三番は歌唱されていません
 
宵の灯(ともしび)点(とも)すころ
心ほのかな初恋を
想い出すのは 想い出すのは
北上河原のせせらぎよ
 
銀河の流れ仰ぎつつ
星を数えた君と僕
想い出すのは 想い出すのは
北上河原の星の夜
 
雪のチラチラ 降る宵に
君は楽しい 天国へ
想い出すのは 想い出すのは
北上河原の 雪の夜
 
僕は生きるぞ 生きるんだ
君の面影 胸に秘め
想い出すのは 想い出すのは
北上河原の 初恋よ
 
~作詩者の菊地規と「北上夜曲」の背景については以下をご参照下さい~
http://www.esashi.com/kikuchinorimi.html

 
 
サビタの花  作詩:大倉芳郎 作曲:原六朗
http://www.youtube.com/watch?v=_69cbHn6Gs4
 
イメージ 7
からまつ林 遠い道
雲の行くえを 見つめてる
サビタの花よ 白い花
誰を待つのか メノコの胸に
ほのかに咲いた サビタの花よ
 
いとしの君は ほろほろと
にれの並木を どこへ行く
花かげ白く 月の宵
待てどはかない メノコの恋は
かなしく咲いた サビタの花よ

 
 
(補足):サビタはユキノシタ科アジサイ属の落葉潅木。和名のノリウツギ(糊空木)。山野に自生し7月から8月にかけて白い可憐な花をつけます。サビタはアイヌ語由来とされています。
 
 
~ 『陽射し・旅人』あの頃の舟木さん・その13「初恋 舟木一夫抒情歌謡をうたう」再び(下) に続きます~

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