~2014 シアターコンサートin新橋演舞場 5月31日(上)のつづき~
第二部 七回忌に偲ぶ 遠藤実スペシャル~決して散らない花々
30分の休憩の後、第二部開演です。南座、中日劇場、新歌舞伎座・・・各会場でそれぞれの季節に合わせた色合いの衣裳をお召しになっていましたが、今回は、純白のスリーピースです。中のシャツは、濃い目のパープル、そしてペンダント。色白の舟木さんには、淡い色もお似合いですが、やはり、なんといってもデビュー当時の清潔なイメージカラーは白、しかも眩しいほどの純白でしょう。その白のせいか、お顔の色が、ほんのりとピンク色にみえて、なんだかドキドキしました(笑)シックな大人の色も、鮮やかな色も、ファンの皆さんが大好きな黒のフォーマルなタキシードも、そして今回のような純白も、本当に何を着ても、ちょっと憎らしいほど素敵なのは、どういうわけでしょう。衣裳に負けないだけのオーラというものなのでしょうか。歌舞伎の坂東玉三郎さんが、豪華な、傾城の打ち掛けや俎板帯をさえ圧倒してしまうほどのオーラを感じさせるのと同じような印象をいつも感じてしまいます。
二部は、緞帳が上がると、舞台中央に、その純白のスリーピースの舟木さんが現れます。
(舟木さんのトークはピンク文字です)
では、二部は遠藤実スペシャルということで、遠藤先生の最初のヒット曲「お月さん今晩わ」を原盤で聞いていただきます。遠藤先生が24歳、かずおちゃん12歳の時・・
お月さん今晩わ
当時は、同時録音ですから、いかに先輩がしっかりしてたか、私は、「高校三年生」で経験したので、緊張がわかります。ローカルな雰囲気を出そうと苦労されたと・・ふつうなら・・とごくフツーに「こんなさびしいぃ田舎の村で♪」となりますが・・と歌ってから、「いんなかのォ♪」とうたマネしてみる舟木さんにまたしても拍手。
遠藤実スペシャル~決して散らない花々・・演歌95%、先生の肌触りを感じていただけたら・・この3曲から・・・
十字路
くちなしの花
すきま風
みっつとも俳優さんのお歌いになった歌で、ひとつめが、小林旭さん、ふたつめが渡哲也さん、みっつめが杉良太郎さん。遠藤先生は、俺は自分が書きたいメロディーで作っているのもあるけど歌う人の個性を最優先して書いてるつもりだとおっしゃっていましたね・・とり蕎麦食べながら・・あまりご一緒に食事をしたことはなかったそうですから、余計にお蕎麦を御馳走になった時の先生との会話を印象深く覚えていらっしゃるのかもしれないですね。いつか舟木君には「湖畔の宿」みたいな歌を歌ってほしいとも・・さすがに本質を見抜いてるというか、すごい人だなァ!と・・
歌ってものは上手けりゃいいってもんじゃないですね。雰囲気が伝わらないと・・「くちなしの花」も、歌い手がきれいにセイリして歌うより、渡さんのように武骨に歌うのがいい、最初に「肌触り」と申し上げたのはその辺なんですが・・・ここでふたつ並べたのは「男唄」と「女唄」
歌ってものは上手けりゃいいってもんじゃないですね。雰囲気が伝わらないと・・「くちなしの花」も、歌い手がきれいにセイリして歌うより、渡さんのように武骨に歌うのがいい、最初に「肌触り」と申し上げたのはその辺なんですが・・・ここでふたつ並べたのは「男唄」と「女唄」
からたち日記
星影のワルツ
この2曲は、ひとつひとつの音をとても丁寧に置いていかれたという感じがしますね。こうやってインストゥルメンタルで聴いていただくと(「星影のワルツ」客席にあの魅力的な背中をみせて・・・)もともとのメロディーの美しさがよくわかっていただけると思います。遠藤先生は5000曲以上の曲を作っていらっしゃるので、1000とか2000とかの個性に向かってメロディーをお作りになったんですから、それをこれだけのステージでやろうなんてことは乱暴きわまりないハナシですが。
私の「高校三年生」「修学旅行」「学園広場」・・など、ああいうものをやらせていただく前は、「学生時代」「鈴懸の径」とかあったんでしょうが、こんなにかたまって青春ソングを歌ったアホはいないでしょう。その前の青春ソングのヒットというと「若いふたり」にしぼられてくるでしょう。
若いふたり
ドドンパのリズムにのって、楽しそうに笑顔がこぼれて、はじける舟木さんでした。このあたりから、本調子という感じで、徐々に尻上がりになって盛り上がっていくのを感じました。
この頃、先生はドドンパのリズムに凝ってた(笑)一時ネ・・二時までは行かない(笑)とダジャレも飛び出します。今回、遠藤実スペシャルで、あえてこれはよそうと思ったのは「困っちゃうな」と「おひまなら来てね」・・
ネ、僕が歌うと、気持ち悪いでしょ(笑)西條先生の「こうして、こうすりゃ こうなると」も大した粋ですね。
「ブンガチャ節」・・「恋の病でお医者を呼んで、氷枕で風邪ひいた」・・これなんかも粋ですよね。
詩人、作曲家、アレンジャー、歌い手、この四つがある時代の中できれいに出揃って出会うというのは、めったにない・・これは「雨の夜に星」みたいなもんで・・言う事が古いね(笑)
一人が5年連続ヒットを飛ばし続けていくのはむつかしい・・(これは舟木さんの実感でもあるのでしょう。)
一人が5年連続ヒットを飛ばし続けていくのはむつかしい・・(これは舟木さんの実感でもあるのでしょう。)
僕なんかもう同年代の人の方しか向かない、嬉しいのか悲しいのかわかりませんが(笑)
錦之介さん、橋蔵さん、雷蔵さん・・右太衛門さんや、千恵蔵さんにはちょっと合わないという人が、そっちの方に行く、これは新しいお客さんが増えるということですからね。
このあたりのトークの展開は舟木さん独特の回路で、「インスピレーショントーク」(私が勝手に名づけた)の世界ですので、私自身も、舟木さんの回路を、好きに解釈してます(笑)
6月にデビューした時は、現役時代の学生服を着てたので、遠藤先生が、薄物の生地で紺と黒の学生服を作って下さった。「赤詰コンサート」の時にも作っていただきましたが・・
遠藤先生の代表的な股旅ものを二つ並べてみました。
天竜母恋い笠
旅鴉
ひとつ目が、ひばりさん、映画にもなったんですが、その頃、僕は映画少年でしたから、たいていの映画は見てます。ふたつ目はテレビの長谷川伸シリーズの主題歌、これなんかは、時代、歌い手の勢いが上手く出会った曲。もともと、こういうメロディーラインは遠藤先生が得意とされていたものだと思います。こういうジャンルの歌はなくなってしまいましたが、昭和の歌のジャンルは豊かだったなぁ・・と
僕と遠藤先生の出会い・・・昭和35年ですから、15歳中学三年・・・漫画を読むかなにかしながらラジオか
ら流れてきた曲にひっかかった。なんて情感のあるメロディーだろう・・と・・この曲は誰がお書きになったん
だろうと知りたくなった。デビューの時に歌の先生につくのに、浜口庫之助さんと二者択一ということになった時に、その時の印象がどこかにあったのでしょう。即座に「遠藤先生にお願いします」と・・ですから「遠藤先生」「高校三年生」へと導いてくれたのはこの歌です。そこから三つ・・・
初恋マドロス
哀愁出船
襟裳岬
ひばりさん(「初恋マドロス」)、ひばりさん(「哀愁出船」)、お千代姉さん(「襟裳岬」)なんですが、「襟裳岬」これは、もう大変なスケールの歌ですね。四行詩はツボにハマるとスケールが大きくなる。日本の歌の中では、実にうまくととのえられた世界だと思います。
先生は詩にも恵まれていた。運というより「めぐり合わせ」の強さ・・作曲家も、詩の世界も恵まれてた方と、ちょっと恵まれなかった方と言うのがあるように思います。
今、遠藤先生のお嬢さんが、会場に来て下さって、さっきから「ヘタだなァ・・」と思いながら聞いていらっしゃるかと・・楽屋のほうにメロンをふたついただきました。
さて、遠藤先生のネバリとツヤが発揮されているこの辺が遠藤メロディーのド真ん中であると僕が自分勝手に並べてみた5曲が遠藤演歌の真髄なんだと思います。
他人船
みちずれ
夢追い酒
ギター仁義
ソーラン渡り鳥
~アンコール
北国の春
こうして、最後のシアターコンサートで、あらためて聴く「遠藤実スペシャル~決して散らない花々」・・・
遠藤実という昭和の偉大な作曲家の、ジャンルを問わない自由自在な発想のメロディーラインを生みだす才能をかみしめると同時に、その幅広いジャンルの曲から、代表作をほぼ網羅したセットリストを、ひとりの歌い手が、自分自身の個性を生かし切って、なおかつ、原曲の魅力を損なわずに、歌い上げることができるという事実にもまた、あらたな感動をいただきました。
遠藤実という昭和の偉大な作曲家の、ジャンルを問わない自由自在な発想のメロディーラインを生みだす才能をかみしめると同時に、その幅広いジャンルの曲から、代表作をほぼ網羅したセットリストを、ひとりの歌い手が、自分自身の個性を生かし切って、なおかつ、原曲の魅力を損なわずに、歌い上げることができるという事実にもまた、あらたな感動をいただきました。
恩師である遠藤先生への敬意と愛情、そして、さらに大きな眺めからの昭和の流行歌への、歌い手としての深い感謝の想いあればこそのステージであることが、痛いほど強く伝わってきました。
昼の部のプレゼントタイムで、舟木さんらしい、さりげなさで、ジョーダンにまぎれておっしゃった、言葉の中に、50余年を「流行歌」の歌い手としての自負を常に忘れず、また文字通り歌に生かされて、歌に命を吹き込み、歌に抱かれ、歌をその胸深く抱いて、旅を続けてこられた舟木さんが、流行歌の世界に生きる後輩たちに、ご自身の足跡をそっと残していこうとなさる、情愛と誠実さを、読み取ることができたことは、私にとっての大きな感激でもありました。
またさらに、ご自身が受けた恩を、一番自分らしい形で返していきたいという義侠心のようなものに舟木一夫という歌い手の心意気、熱い芸人魂を見た想いがしています。
舟木さんほど、理想的な形で、古き良き時代の人情やけじめ、人としての品位を心と体に沁み込ませている芸能者は、もう本当に少なくなったような気がしています。ひとりでも多くの後輩の方たちが、なにか、ひとつでも、舟木さんの精神を受け継いでくださることを心から願っています。
2月の南座、3月の中日劇場、5月初旬の新歌舞伎座に続き、今回で、シアターコンサート、四会場10公演、を楽しませていただきました。
拙ブログでも、それぞれの会場のコンサートのご報告をさせていただいております。今回は、遠藤先生の一曲一曲のご紹介としては失礼していて、詳しくは、掲載しておりませんが、それぞれの作品に込められた先生の想いや、思い出などを、ご自身の自伝に記されていらっしゃいます。いつか現れるであろう、有望な若き歌い手のために芸名として「舟木一夫」という名前をあたためてこられた頃を中心に、その前後を通じて、遠藤氏がどのような道をたどってこられたか、舟木さんの選曲なさった歌を時系列でたどっていくと、氏の「ながしのギター弾き=演歌歌手」から作曲家への歩み、また作曲家として名を成された時期、ミノルフォンを立ち上げて独立された頃の御苦労、その後のご活躍など、ほぼ重ね合わせることができます。今回の「遠藤実スペシャル~決して散らない花々」で舟木さんが歌唱された名曲たちについて、遠藤氏御自身の回想として、いきいきとその誕生秘話など含めて顕されている遠藤実自伝「涙の川を渉るとき」をお読みになっていただけたらと思います。
「私の履歴書」遠藤実 自伝「涙の川を渉るとき」(日本経済新聞出版社刊2007年発行)
それぞれの、名曲については、下記にも少し御紹介していますので、併せてご参照いただけたらありがたく存じます。
2014年・舟木一夫シアターコンサートレポートURS リスト (春日局まとめ)↓
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69102293.html 2月22日/23日南座(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69103747.html 2月22日/23日南座(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69216207.html 3月28日/29日中日劇場(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69216225.html 3月28日/29日中日劇場(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69325393.html 5月2日 新歌舞伎座(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69325446.html 5月2日 新歌舞伎座(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69103747.html 2月22日/23日南座(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69216207.html 3月28日/29日中日劇場(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69216225.html 3月28日/29日中日劇場(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69325393.html 5月2日 新歌舞伎座(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/ycmay26/69325446.html 5月2日 新歌舞伎座(下)
作曲家・遠藤実氏の七回忌にあたり、彼と相通じる魂を持った愛弟子のひとりである舟木一夫という歌い手が、その歌手生命をかけて、恩師の偉大な存在を、再認識していただくために企画した試みは、興行的な成果に加えて、日本の昭和の流行歌史をあらためて提示したものであるという意味でも、私は、軽音楽、大衆芸能の世界において、高く評価されるべき実績を残したと断言できるのだと思っています。
舟木さんが、これからチャレンジしていきたいと望んでいらっしゃるこういった、コンサート活動が、舟木さ
んご自身の今後のライフワークの中心ともなり、また昭和を生きてきた私たち世代の誇りを喚起するステージとなるであろう、嬉しく幸せな予感に、胸が高鳴る想いでいる私です。
あたらめて、謹んで遠藤実氏の偉業を偲び、追善の想いを深くしています。また、今回の舟木さんの果敢なる企画へのチャレンジと、恩師への深い敬愛の念に、心打たれ、心洗われる時空間を多くの舟友さん、舟木さんファンの皆さまと共有できましたことを、幸せに思っています。
最後に、今回の試み2014年・舟木一夫シアターコンサート「遠藤実スペシャル~決して散らない花々」のステージのご成功を心よりお祝い申し上げて、私の拙いれぽの締め括りとさせていただきます。