舟木一夫特別公演~新橋演舞場 2014年9月2日~9月24日
第一部
天一坊秘聞「八百万石に挑む男」 新橋演舞場公演
橋本忍原作
(東映映画「八百万石に挑む男」より)
斎藤雅文 脚本
金子良次 演出
斎藤雅文 脚本
金子良次 演出
山内伊賀之亮:舟木一夫
天一坊:尾上松也
大岡越前守:林与一
徳川吉宗:田村亮
大岡の妻・りつ:長谷川稀世
赤川大膳:柴田彦
松平伊豆守:林啓二
天一坊侍女・ぬい:長谷川かずき
僧・秀沢:尾上徳松
~以下はパンフレッ掲載のお芝居のあらすじの前文です~
八代将軍徳川吉宗は、いくつもの幸運によって将軍の座についたといわれる。二代紀州藩主徳川光貞の四男として和歌山に生まれた吉宗は、越前国に所領を与えられ、小大名として終わるはずだった。ところが、父や兄が次々に亡くなったため宝永二(1705)年に御三家第二位の紀州藩主となった。
さらに、七代将軍徳川家継が七歳で亡くなり、享保元(1716)年に将軍職を八代目として継ぐことになった。こうして、後に「享保の改革」と呼ばれる時代が始まったのであるー。
今回のパンフレットでは、とても詳細に、場面展開を、そのままに追って、あらすじがまとめられています。
自分自身が、お芝居を実際に観て、印象的なセリフや要所要所の場面などを、メモをして拝見していますが、パンフレットの記載が、ほぼカンペキに物語の流れを過不足なく捉えたものになっていますので、惜しくも舞台を御覧になれない方にも、わかりやすい、本当にいいパンフレットだと感服しています。
ですから、そのあらすじを、そのまんまご紹介したほうが、むしろわかり易いのかとも思いますが、ここでは、私なりのご報告をさせていただきますね。もちろんパンフレットをおおいに参考にさせていただいています。
では、「その1」では、まず、第三場までのご報告とします。
舟木さんのセリフのみピンク文字です
第一場 中山道坂本の外れ(春の午後)
享保十四(1729)年春。中山道坂本宿のはずれでは、付近に暮らす人々と地主の一党が争っている。しかし、村人たちは歯がたたず、樵の孫娘のおぬいも、山刀を手に斬りかかるが窮地に・・。そこへ、金剛杖を手にした山伏姿の若者天一坊が現れ、男たちに立ち向かっていく。しかし多勢に無勢、あわやという形勢となった時、饅頭笠を目深くかぶった旅拵えで、身なりはよろしくないが、人品骨柄の立派な浪人風の舟木・伊賀之亮が、花道から登場します。もちろん、「待ってました」とばかりに大きな拍手が・・・
花道に逃げてきたおぬいを後ろに庇い「お前は何者だ!と狼藉者たちに問われた伊賀之亮「わしは鞍馬の烏天狗だ!」そして舞台の下手で苦戦する天一坊に加勢し立ち回りとなります。
地主の若旦那が、自分の血筋のことを言いたてると、天一坊は「俺は、血筋がどうのというヤツが一番キライなんだ!」と言い、「俺の親父は、今をときめく徳川八代将軍吉宗だ!」と叫んだのをきいて、伊賀之亮の表情が一変します。
「面白き若者を目の当たりにするものだなぁ・・・」と伊賀之亮。
天一坊も、また、「そなたがあの吉宗のなぁ・・」と言って将軍を、「吉宗」と呼び捨てにする伊賀之亮を不審に思うのです。この場面が将軍吉宗を仲立ちにした伊賀之亮と天一坊の出逢いとなり、物語の始まりとなるのです。舟木・伊賀之亮の「あの吉宗のなぁ・・」にこめられた懐かしさのともなう情感あるセリフ回しに注目!
ここで思いっきり吉宗への親愛の情が感じらるところが、この脚色の見事なオヘソだと感じます。
このように、このお芝居では、吉宗を近しい人のように呼ぶ伊賀之亮と今は将軍となっている吉宗との間に、過去になにか大きな関わりがあったことを示す脚色の伏線となっているのですね。
天一坊に、御落胤である証拠の品の短刀と書き付けを見せてもらい、間違いなく紀州徳川家に代々伝わる宝刀の後藤祐貞であると鑑定した伊賀之亮は、「その二品は、世にも面白き芝居を見せてくれるやもしれぬ。その舞台でひとさし舞おうてみはせぬか・・?!」と意味ありげに言うのです。しばらく、伊賀之亮の言葉の真意をはかりかねているかのような天一坊ですが、「ゆくぞ!」と促す伊賀之亮の後ろ姿を見て、心ひかれたのか、にっこりと笑って、伊賀之亮のあとを追って行くのでした。
音楽は、壮大な夢に向かって行く伊賀之亮と天一坊の運命のはじまりを暗示するかのようなスケール感のある、まるでクラシック音楽のような印象。舟木さんのどっしりと落ち着いた風格と松也さんの若者らしいやんちゃぶりが、この先のお芝居の面白さを約束してくれるような幕開けです。
第二場 江戸城内(三月後、夏の午後)
三ヶ月ほど経った夏の午後。大坂城代から吉宗の御落胤を名乗る天一坊についての報告が江戸にあり。幕府では老中筆頭松平伊豆守が対応に苦慮している様が描かれています。
ここは、老中筆頭松平伊豆守と南町奉行大岡越前が、将軍御落胤と名乗る天一坊の出現に対処するべく、情報をやりとりする場面です。大岡越前は、多くの事件を裁いてきた経験から、この騒動のカギを握る相手が伊賀之亮であることを既に見抜いています。林与一さんが越前の静かな知性と鋭い眼力を説得力をもって演じていらっしゃいます。林啓二さんの老中筆頭役も貫録充分です。
ここは、老中筆頭松平伊豆守と南町奉行大岡越前が、将軍御落胤と名乗る天一坊の出現に対処するべく、情報をやりとりする場面です。大岡越前は、多くの事件を裁いてきた経験から、この騒動のカギを握る相手が伊賀之亮であることを既に見抜いています。林与一さんが越前の静かな知性と鋭い眼力を説得力をもって演じていらっしゃいます。林啓二さんの老中筆頭役も貫録充分です。
第三場 品川、八つ山御殿(晴れた秋の昼下がり)
二ヶ月ほど後の秋。江戸に出た天一坊と伊賀之亮は、品川の八つ山御殿を居所としていました。
美しく紅葉した見事な庭を臨む、高台にある八つ山御殿の舞台状の張り出し部分での第三場。前半は、野育ちの天一坊が、にわかに「若様修業」をしている姿や、それを見守る伊賀之亮、家来たちなどを、ユーモアを交えて見せる、このお芝居では、一番のどかな空気が漂う場面と言えるでしょう。舟木・伊賀之亮が、天一坊に「人は心といいますが、一方で人は見た目ということもございまする」と御落胤たる者の心得を諭して、まるで父か兄のように優しいまなざしで、やんちゃな天一坊をみつめる姿に注目!
見た目が本物の御落胤のように見えれば、騙し通すことができるものか?と問う天一坊に、「たやすきこと。ただ、常に隅々にまで目を配り、その絵を見事、描ききってみせる軍師がなければ成就せぬこと・・」と己の自信のほどを伝えて、安心してついてくるようにとの気持ちをあらわす舟木・伊賀之亮のカッコイイこと!
そして「本来、侍というものは主君を選ぶことができたものを、それが泰平の世になって生まれた時に引い
たくじで己の一生が定まるとは笑止千万!」と文武に人一倍優れながらも生まれながらの身分だけで運命が決められてしまうという、しがない足軽の子だった伊賀之亮の忸怩たる思いが、伝わってくるセリフです。
たくじで己の一生が定まるとは笑止千万!」と文武に人一倍優れながらも生まれながらの身分だけで運命が決められてしまうという、しがない足軽の子だった伊賀之亮の忸怩たる思いが、伝わってくるセリフです。
御殿の庭を見て、「豪壮なものだ!」とその贅沢を憎々しげに思う様子の天一坊に「このようなものは浜辺
の砂のひとつぶにもあたりませぬ。いっそのこと八百万石いかがかな?」と水を向ける伊賀之亮。「八百万石・・・徳川幕府丸ごと・・?!」と桁違いの伊賀之亮の企みにあらためて自分の行く手に待つ未知の世界に一瞬ひるむような風情を見せる天一坊の若者らしい純粋さとの対比も、よく描けていると思います。
の砂のひとつぶにもあたりませぬ。いっそのこと八百万石いかがかな?」と水を向ける伊賀之亮。「八百万石・・・徳川幕府丸ごと・・?!」と桁違いの伊賀之亮の企みにあらためて自分の行く手に待つ未知の世界に一瞬ひるむような風情を見せる天一坊の若者らしい純粋さとの対比も、よく描けていると思います。
この後、後半は、天一坊が、今は、侍女となっている樵の娘のぬいに、「お墨付きの品」は、自分が育てら
れた寺を出る時に盗み出したものであることを告げ、それを盗み聞きしてしていた幕府の間者に気づいた伊賀之亮が、成敗しますが、そのことを伊賀之亮にも聞かれてしまった天一坊は、自分も伊賀之亮に殺されてしまうのではないかと怯えます。
れた寺を出る時に盗み出したものであることを告げ、それを盗み聞きしてしていた幕府の間者に気づいた伊賀之亮が、成敗しますが、そのことを伊賀之亮にも聞かれてしまった天一坊は、自分も伊賀之亮に殺されてしまうのではないかと怯えます。
しかし、伊賀之亮は、高笑いして、「それでこそ、天一坊様、この一命を賭けて悔いなきお方と存じます。仮にそなたが真の御落胤であったとしよう。私は、迷子を親元に届けるだけのお役目。そんなのは、真っ平御免でござる。私は『俺の親父は将軍吉宗だ!』と言ったその言葉に惚れたのだ!嘘と偽りで塗り固められた世の中を我らの力でひっくり返してみようではないか。」と天一坊の肩に手を置き、「天一、愉快よな、いや、大いに愉快よな!」と楽しげに笑う舟木・伊賀之亮、とにかく豪快です!
音楽は、再び、夢の成就を間近にして、高揚する伊賀之亮の胸の高鳴りを現すかのような壮大な響きを奏でて、暗転となります。
四場に入る前に、幕前でのお芝居があります。
天一坊が育った寺の僧・秀沢、寺は失火により廃寺となり、今は諸国遊行の乞食坊主となっている。その秀沢が、天一坊の噂を聴きつけて八つ山御殿の周辺をうろついている。秀沢が、天一坊に逢いたいと思うその真意は、何か?天一坊の出生の秘密についての真相を知っているのはこの秀沢のみなのですが・・・
先ずは、第三場までの、展開を、私なりにまとめてみました。
これから、いよいよ佳境に入っていきますが、この続きの、第四場からは、また後日アップします。