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Channel: 舟木一夫の世界~れんげ草の咲くさんぽ径~
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ちょっと箸やすめ~浅草寺・平成中村座陽春大歌舞伎ご紹介&「芸とは、表現者とは」雑感

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ちょっと時間が経ってしまいましたが、3月31日の練馬文化センターでのコンサートの翌日は東京に居残りをして「平成陽春大歌舞伎」の初日舞台を楽しんできました。通常の歌舞伎公演は、1日からスタートすることはマレなことなので、31日のコンサートと翌月の1日の初日が連続していて、一日居残りするだけですみましたから幸運でした。

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十八代勘三郎さんが亡くなって、まだ三年足らずです。これからしばらくは「平成中村座」の舞台を観ることはできないだろうな…とあきらめて覚悟していたので、私としては正直、諸々の意味合いでまさか、これほど早くに「平成中村座」が再開したことに驚きました。勘九郎さん、七之助さんご兄弟の頑張り、また中村屋ご一門の結束力と亡き勘三郎さんへの想いの深さに加えて、浅草にとっていかに「平成中村座」の存在が大きく、また地元の皆さんに愛されてきたのかを痛感しました。松竹歌舞伎会のwebサイトでのチケット発売状況をチェックしていたら、すでに発売日から2週間足らずで「残席なし」の文字が出ていました。

私にとっては、昼の部の「新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)」が、勘九郎さんの初役で拝見できるので一番の楽しみでしたが、これまでもそうですが彼は初役の舞台でも本当にお役の性根をしっかりとつかんで情感たっぷりに演じられるのですが、今回もいい宗五郎を描いていらして、感服しました。また七之助さんが艶やかなお姫さまや妖艶な美女とはうって変って長屋の魚屋のおかみさんを、実にこなれた表現力で演じる姿にも驚かされました。
坂東玉三郎さんが「怪談・牡丹灯籠」で俗っぽいおかみさん役のお峰を演じたのを観た時も、役者さんとは本当に様々な色でカンバスを塗っていくものなんだと目からウロコでしたが、七之助さんの確かな芝居の表現力にも毎回舌を巻きます。二十歳頃からの、このご兄弟の舞台にはずっと驚かされっぱなしです。勘三郎さんの「芸」への厳しい姿勢、DNAは、間違いなくお二人の中に生き続けていることがとても嬉しいです。

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歌舞伎美人webサイトより
「平成中村座に三年ぶりの一番太鼓が鳴り響く」
4月1日(水)、初日を迎えた「平成中村座 陽春大歌舞伎」では、開幕を告げる一番太鼓が打たれました。

平成中村座に三年ぶりの一番太鼓が鳴り響く 浅草に帰ってきた平成中村座が桜満開の中、いよいよ開幕。江戸の芝居小屋の風情を残したいと、十八世勘三郎と田中傳左衛門が平成中村座の立ち上げの際に復活させた「一番太鼓の儀」が厳かに行われました。勘九郎が傳左衛門に大太鼓の撥(ばち)を渡し、七之助と開場前から楽しみに詰めかけていた大勢のお客様とともに平成中村座初日を祝いました。
勘九郎は、お集まりのお客様からの「おめでとうございます!」の声に、「ありがとうございます」とにこやかに応えながらマイクを握り、「いよいよ始まります。この一番太鼓もここで聞くのは初めてで…」と切り出しました。父の十八世勘三郎の役割をまた一つ受継いだ勘九郎は、「皆さまからパワーをいただいて初日を開けていたんだなということがよくわかりました」と、感極まった様子で続けました。
「お客様一人ひとりに楽しんでいただける芝居ができたらいいなと思っております。そのために、売店の方やお茶子さん、裏方さん、皆さんのお力を借りて一所懸命舞台を勤めたい。平成中村座の舞台ができること、本当にうれしい気持ちでいっぱいです」と、勘九郎は喜びと感謝の気持ちを語りました。続いて七之助も、「兄が申しましたとおり、浅草寺の境内に平成中村座を建てさせていただき、本当にうれしいです」と、地元浅草の皆さんへの感謝に続いて、「父も絶対、上で喜んでいます。喜んでいると思うんですけど、舞台の内容がよくないと怒られますので、あとは舞台をしっかり勤めます。皆様、久しぶりの平成中村座を楽しんでください」と、晴れやかな笑顔でお客様の声援に応えました。

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公演は5月3日(日・祝)まで。(チケットは完売のようです。当日並べば立見席はあるかな?)

下の写真は私の携帯カメラで撮影したものです。上の一番太鼓の取材のあと、すぐに勘九郎さんだけが中村座の小屋の裏手にある浅草神社に成功祈願をするために走ってこられました。ラッキーにも、たまたま私はそこに居合わせだけです(笑)ほかには人がほとんどいなかったのでこんな間近で。


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私は、初日に観劇したのですが、「中村小山三は、体調不良のため休演いたします」というお知らせがあり、残念に思ったのですが、ご高齢なので仕方がないかな…と軽~く受け止めていました。今日、ネットニュースで訃報を知り、三年ぶりに戻ってきた浅草での「平成中村座」の大盛況を見届けた上で安心して旅立たれたのではないかという想いがしています。十七代、十八代の勘三郎に仕えて、中村屋のみならず歌舞伎界の生き字引と言われ、当代の名だたる名優の皆さんはじめ、若手の俳優さんたちが、一緒に舞台のお仕事をして小山三さんを通して、少しでも先人たちの遺された財産を受け継ごうとこぞってオファーされていたそうです。一ヶ月興行で同じ舞台に立つことから得るものは有形無形に限らずはかりしれないものがあるのでしょう。小山三さんの最後の舞台は、今年1月、歌舞伎座の「寿初春大歌舞伎 一本刀土俵入の安孫子屋酌婦お松」。ほぼ終生、舞台に立たれての大往生ということになります。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。合掌。


4月6日、中村小山三さん死去、94歳 中村屋を支えて90年、歌舞伎界の生き字引(webニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150407-00000006-spnannex-ent

中村小山三(なかむらこさんざ)さん、2014年4月、松尾芸能賞功労賞受賞。この年には舟木さんの公演でも共演された新派女優の波乃久里子さんが大賞を受賞されています。

小山三さんは後列向かって右端、前列向かって右から三人目が波乃久里子さん

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松尾芸能賞
松尾芸能振興財団(まつお げいのう しんこう ざいだん)が1980年(昭和55年)に創設した日本の芸能賞。毎年その年に活躍した舞台芸能の関係者を顕彰して「優秀賞」、「特別賞」、「新人賞」が贈呈され、また年によっては「大賞」、「功労賞」(1996年制定)、「研究助成」(2011年からは「研究助成賞」)などが贈呈される。

舟木さんは2001年(第22回)に大賞を受賞されています。
その翌年は中村勘三郎さん(当時勘九郎)が大賞を受賞。

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勘三郎さんのご子息の六代目勘九郎さんが2012年に新人賞、2015年(3月27日贈呈式)には同じく七之助さんも新人賞を受賞されました。

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~歌舞伎美人webサイトより~  七之助さんの新人賞受賞のニュース
http://www.kabuki-bito.jp/news/2015/03/post_1359.html

陽春大歌舞伎が開催されている「平成中村座」の小屋の内部です。撮影は自由です

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画面向かって左の屏風前の四席が、ウワサの「御大尽席」です 二階席、舞台の真正面

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このところ私が親しんできた伝統芸の世界で、桂米朝師匠をはじめ、大きな功績を遺された方々の訃報をあいついで聞き、「舞台芸術」の奥深さや、またその世界の中で私たちには想像も及ばない研鑽を重ね、精進を続けてこられた方々によって「ひととき 日常から離れた異空間」を楽しませていただいていることへの感謝の念をさらに強くしています。「芸は一日にしてならず」の感に、聴く側、観る側の姿勢をもあらためて省みる今日この頃です。

以下、「婦人公論」の今年の1月22日号に掲載された坂東玉三郎さんのインタビュー記事です。いつか機会があれば、拙ブログでもご紹介できればと思っていましたが、今の私の心境とも重なるのでアップさせていただきます。

~インタビューまえがき~
歌舞伎俳優としてだけではなく、演出家、映画監督などとしても多彩に活躍する坂東玉三郎さん。この数年、歌舞伎界に起きたつらい出来事をなんとか乗り切り、一年前よりも前を向けるようになったとのこと。その心境の変化とは

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~一部抜粋させていただきました~

イメージ 222014年は思いのほか平穏な年でした。でも、ちょうど一年前のお正月はひどい風邪をひいて声がでなくなってしまいました。きっと微妙な空気の変化、PM2.5などの影響もあるのでしょう。喉の炎症が激しくて3ヶ月も出なかったのです。はじめての経験。役者として声がでないことほどつらいことはありません。二度と出なくなってしまうんじゃないか」と動揺したものの、不思議なことに舞台では出るし、歌えるのです。発声の先生にも「もう大丈夫」と言ってもらえて安心できました。
そうしたアクシデントはありましたが、最悪だった体調面も精神面もずいぶん持ち直してきまして、それは、ある意
味、状況に慣れたというか、あきらめたということなのかもしれない。人生は変わっていくものだということを身に沁みて感じ、そのことをちゃんと受けとめられるようになったのだと思います。仁左衛門さんが復帰されて嬉しい限りですが、同時にこれからは次の世代と演じることに重きをおいていきたいと考えています。次世代を育成しようと思ってもできるものではありません。本当はもっと稽古場に長くいてもらいたい、教育されるという時間を持ってもらいたいけれど、みんな持てない。だから、一緒に出る。一緒にいてもらわない限り伝えることはできません。私は生来、気短で慌てものだけど、これ以上ジタバタしても始まらないと思えたのですね。私ができることは、ただいることだけ。それで何も変わらないのであれば(歌舞伎)はそのまま終わるしかない。伝承を、自分の人生を捨てない、急がない。ようやく、そこに落ち着けたのです。

年齢を重ねると、身体も変わっていきます。どこか筋肉の緩みが出るし、声も年をとった声になってゆく。それでも、表現したいと思う欲求が衰えないことはありがたい。だからこそ、人に見せはしませんが、表現するためのトレーニングや努力は惜しみません。だって、それで生きているのですもの。それで食べているのですもの。そうして私は生き甲斐を感じたいと思っています。

過酷な世界ですって?確かにそうですね。でも、60を過ぎて、ラッシュアワーの山手線で通勤することだって過酷じゃないですか。人間にとって何が過酷といえば、生きていくこと自体が過酷なのですから。大人になって少しは楽に生きられるかと思っていたのだけれど、とんでもない(笑)大人になればなるほど苦しくなっていきます。人生は切実です。
でも、劇場にいらしてくださったお客様に、ひととき、浄化される幸せな時間を過ごしていただける役者という職業に就けたことを、今さらながらありがたく思っています。ええ、本当にありがたいの。そして、ありがたいと思えるようになった自分をつくづく幸せだと感じています。

インタビューの最後に、こんな風に言われています。

生ってどんどんつらいことが降ってくる。本当の意味で感謝ができない人には幸運は来ないということに、ようやく気づきました。感謝と言っても、大げさなものじゃないんですよ。小さな幸せを「幸せ」だとちゃんと認識して感謝できるということ。「今日も無事に過ごさせてもらってありがたかった」と本当に思えること。無事に一日を過ごせたとき「あ、ありがたかった」と思えたら、それは幸せなことと思いませんか。私は小さい頃に苦しかった時期がありましたから、今になって感謝することの大事さが痛感できたのでしょうか。幸福は、日常の些細なところに宿っています。


最後に、ちょっとだけ「舟木さんを探すさんぽ径」

浅草寺にくるとどうしても撮りたくなる提灯「小舟町」

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イメージ 24「小舟町」という提灯は高さ約3.7メートル、幅約2.7メートル、重さ約400キロ。製作費は約400万円といい、中央区の日本橋小舟町の有志が町内の個人や商店、企業約190件の寄付を集め実現した。約340年前、同町の魚河岸商人の信徒らが提灯を奉納したのがきっかけで同町で受け継がれている。

一心太助江戸っ子祭り
https://www.youtube.com/watch?v=Jdu8EXYjvMI


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浅草神社(あさくさ じんじゃ)は、通称に三社権現(さんじゃ ごんげん)、三社様(さんじゃ さま)



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           浅草神社の境内にある川口松太郎氏の句碑

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      新仲見世通りのマルベル堂                         デビュー当時の笑顔、ちょっとムリしてる?(笑)

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私のお気に入りのプロマイド

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玉三郎さんの記事を読んで、ひとりの人間としての幸せに心を向ける健全な魂が、多くの人を魅了する素晴らしい舞台芸術の原点なのかも知れないとあらためて思います。稀有な才能の持ち主であり唯一無二の光を放つ舞台人であることと、ひとりの人間としての健全な感受性、これが私の心を揺さぶる敬愛する芸能者に求めている姿なんでしょう。舟木さんと二年半前に「再会」できたときに直感したのもそういったあるべき芸能者特有の香りと輝きが一目瞭然で伝わってきたからと言ってもいいと思います。

浅草公会堂前の「スターの広場」の手形とステージで輝く舟木さん                      

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