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Channel: 舟木一夫の世界~れんげ草の咲くさんぽ径~
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舟木一夫 抒情歌謡を歌う 藤村「若菜集」より~その1 「惜別の唄」

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 5月27日発売 

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日本コロムビア インフォメーション 舟木一夫ニュー・シングル 春はまた君を彩る webサイト
http://columbia.jp/artist-info/funaki/info.html#43551


フルコーラス「春はまた君を彩る」と「そばにいるから」ツーコーラス目まではこちらを開いて聴いてみてください




本日の私のさんぽ径、まだ小さな梅の実に出逢いました

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舟木さんと言えばまずは第一に「学園ソング」。詰襟の爽やかな「永遠の高校生?」というイメージが一般的かもしれませんが、私の中の舟木さんは、ずっと絣模様の着流しで憂いを含んだ独特の魅力的な声でしっとりと抒情歌を唄う人…というイメージでした。

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日本の流行歌の系譜の中で、舟木一夫という歌い手は「抒情歌謡の第一人者」だと言っても、異議を唱える人はいないのじゃないかと思っています。少なくとも私には舟木さんのほかに男性歌手で「抒情歌」を、これほど格調高く、ナイーブに歌える人は思い浮かびません。まして「抒情歌謡」と銘打った場合は、なんたって舟木一夫でしょう。藤山一郎さんも抒情歌をたくさん歌われていましたが、声質が全く違います。日本的風土独自の湿り気を感じさせるという点ではやはり舟木さんの声質にはかなわないように思っています。これを「暗さ」ととらえるのか「憂い」と、とらえるのかは聴く側の嗜好であったり感性であったりしますから、あくまでここでは私の好みということで…(笑)

ここで、またウィキペディアのお世話になりますね。

イメージ 10叙情歌(じょじょうか)
抒情歌とも書き、日本の歌曲のジャンルの一つ。 「抒情詩」の派生語で、作詞者の主観的な感情を表現した日本語の歌詞に、それにふさわしい曲を付け、歌う人や聴く人の琴線に触れ、哀感や郷愁、懐かしさなどをそそるものを指し、これらの童謡や唱歌をはじめ、歌謡曲のスタンダードなバラードといったものを一つのジャンルにまとめたものである。

上記の解説にもありますが、叙情と抒情のふたとおりの書き方があります。
私は、「抒情」派です。以前に気になったので「叙情」と「抒情」の違いについて調べてみました。
あくまで一説ですから、正しいのかそうでないかはわかりませんが、私はこの説明がとても気に入って、私自身もそう思えるので、「抒情」を採用?しています。

以下がその説明の大まかなまとめです。

「抒」は「汲み出す」の意味から「表現する」を表すようになった漢字。
「叙」は単に述べるという意味。
心の内面を述べるには「抒」のほうが本来的のようですが、常用漢字表に「抒」の字がないため「叙情詩」という表記が広く使われるようになったと思われます。

その「日本の抒情歌謡」の第一人者である舟木さんの「抒情歌」の中でも、島崎藤村の処女詩集「若菜集」に収められている作品のうち、三作品をあらためて聴いてみたいと思います。

先ずは、タイトルにも掲げていますが、「その1」として「惜別の唄」をkazuyanさんの動画でお聴きくださいね。

この曲は、アルバム「初恋~舟木一夫 抒情歌謡を歌う」(1971年)に収録されています。他にも、この音源で、その後、CDなどにも何度か収録されていますのでお馴染みの曲だと思います。舟木さんの声質にぴったりの古風で抒情性の色濃い作品ですから、私も飽きることなく本当にくり返しくり返し聴いています。                        
                                       「初恋~舟木一夫 抒情歌謡を歌う」(1971年)

惜別の唄  作詩:島崎藤村 作曲:藤江英輔イメージ 4
https://youtu.be/FyVJOMm3-6M

遠き別れに 耐えかねて
この高殿に 登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣を ととのへよ

別れといえば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を 眺むれば
夢恥かしき 涙かな

君がさやけき 瞳(め)のいろも
君紅の 唇も
君が緑の 黒髪も
またいつか見ん この別れ

後述しますが、作曲者の藤江氏も言っているように「惜別の歌」の原詩は、島崎藤村の「若菜集」にある、姉と妹がかけあいで詠うスタイルです。「合唱」と名づけられいて、その連作のうちの最後の四つ目の「高楼」が元になっています。嫁いで遠くへ旅立って行く姉とそれを送る妹とのあいだに交わされた別れの歌で、原詩は、すべて、ひらがな表記です。

イメージ 3四 高楼      (「若菜集」所収「合唱」より)
わかれゆくひとををしむとこよひより
     とほきゆめちにわれやまとはむ

「わかれゆくひとをおしむとこよひよりとほきゆめちにわれやまとはん 」
              ↓
 「別れ行く人を惜しむと今宵より遠き夢路に我山訪はん」
              
とほきわかれに たへかねて
このたかどのに のぼるかな
かなしむなかれ わがあねよ
たびのころもを とゝのへよ

わかれといへば むかしより
このひとのよの つねなるを
ながるゝみづを ながむれば
ゆめはづかしき なみだかな
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したへるひとの もとにゆく
きみのうへこそ たのしけれ
ふゆやまこえて きみゆかば
なにをひかりの わがみぞや

あゝはなとりの いろにつけ
ねにつけわれを おもへかし
けふわかれては いつかまた
あひみるまでの いのちかも

きみがさやけき めのいろも
きみくれなゐの くちびるも
きみがみどりの くろかみも
またいつかみむ このわかれ

なれがやさしき なぐさめも
なれがたのしき うたごゑも
なれがこゝろの ことのねも
またいつきかむ このわかれ

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きみのゆくべき やまかはは
おつるなみだに みえわかず
そでのしぐれの ふゆのひに
きみにおくらむ はなもがな

そでにおほえる うるはしき
ながかほばせを あげよかし
ながくれなゐの かほばせに
ながるゝなみだ われはぬぐはむ

*註
藤江英輔氏は「惜別の歌」として発表されていますが、小林旭さん歌唱でレコード化された際に「惜別の唄」となったようです。舟木さんは小林旭さんのカバーとして歌っていらっしゃいますので、タイトル表記も歌詩も、小林旭さんのものと同じです。

  ~「惜別の唄」について~

明治三十年(1897年)刊行の藤村の処女詩集「若菜集」に掲載された「高楼」に作曲者の藤江英輔氏が後年曲をつけたということです。「高楼」が「惜別の歌(唄)」になるまでの経緯は、かなり複雑で紆余曲折があるのですが、藤江氏、ご自身の書かれた「惜別の歌」誕生物語ともいうべき文章の一部を抜粋させていただきます。

小諸城址 懐古園 惜別の歌 歌碑
 
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~「センチュリーフォーラム21」という小冊子の平成15年(2003年)4月臨時増刊号に掲載~

                                                   作曲者の藤江氏

イメージ 7この島崎藤村の詩は、処女詩集『若菜集』(明治30年、1897年)にある『高楼』から採ったもので、原詩は嫁ぎゆく姉とその妹との対詠という形式になっている。だから『惜別の歌』の1節、「悲しむなかれ、わが友よ」は、正確には「悲しむなかれ、わが姉よ」である。姉を勝手に友に置きかえて歌っていたのだ。レコードに吹き込むなら、原詩の著作権者の諒承が必要であった。

幸いだったのは、ぼくの勤務していたのが新潮社だったことである。たまたま、その時期に『島崎藤村全集』19巻が新潮社から刊行中だった。そのおかげで、藤村の遺児で画家の蓊助氏とは、ぼくも面識があった。さっそく、蓊助氏宅をお訪ねして、ご承知いただけたのは何かの〝めぐり合わせ″という感が深かった。

この歌がさらに一般の歌となるまでには、なお曲折があった。戦争中、板橋の造兵廠で『惜別の歌』を歌って学徒出陣兵を送った学生・生徒たちは、それぞれの大学や学校に戻ったあと、友人などにこの歌を歌って聞かせた。東京女子高等師範学校(お茶の水女子大)の学生など、卒業後教師になった者のなかには、赴任先の学校で生徒にこの歌を教えた者も多かったと聞く。そのようにして、この歌は全国に拡散していったのであった。

ぼくは知らなかったが、昭和30年ごろ、各地の盛り場に「歌声喫茶」なるものが続々と出現していた。毎夜、100人を超える若者たちが集まって、〝われらの歌″の大合唱をするのである。その合唱の曲目のなかに『惜別の歌』が組み込まれていた。レコード会社は「歌声喫茶」に着目し、リクエスト回数の多い歌を次々にレコーディングして売り出した。『惜別の歌』もそうして商品化された。

ただ、レコード会社の敏腕な社員も、この曲を作ったのは、おそらく藤村と同時代の人間で、すでに物故者だろうという早合点から、積極的に作曲者を探そうとはしなかったようである。なぜなら、ぼくのところへ日本コロムビアの邦楽責任者が探し探しして訪ねてきたのは、もうとっくに小林旭というスターの吹き込みが終わり、発売予定の1週間前だったからである。
レコードジャケットを見ると、ぼくが楽譜に書いた『惜別の歌』は『惜別の唄』となっており、歌詞の4番が削られて3番までとなっていた。

 
~上記の「高楼」から「惜別の歌」そして「惜別の唄」への経緯の詳細はこちらでご覧ください~

「二木紘三のうた物語」webサイト
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/04/post_4858.html

中央大学学生歌『惜別の歌』の作曲者 藤江英輔氏(昭和25年法卒)が語る、その生い立ち
http://www.yomiuri.co.jp/adv/chuo/hakumon/2010aniv125th03.html

「若菜集」の原詩は 青空文庫サイト でご覧になれます。 
http://www.aozora.gr.jp/cards/000158/files/1508_18509.html


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