明治座 舟木一夫 8月特別公演 (1970年8月1日~8月28日)
昼の部 11時開演
1 新吾十番勝負 2部 12場
原作:川口松太郎「新吾十番勝負」(朝日新聞・新聞小説より)
原作:川口松太郎「新吾十番勝負」(朝日新聞・新聞小説より)
脚本・演出:土橋成男
美女丸(後に葵新吾):舟木一夫
お縫・お咲:光本幸子
松平頼安:伊志井寛
梅井多門:河原崎権十郎
お縫・お咲:光本幸子
松平頼安:伊志井寛
梅井多門:河原崎権十郎
真崎庄三郎:花柳喜章
徳川吉宗:岩井半四郎
お鯉の方:長谷川季子 ほか
徳川吉宗:岩井半四郎
お鯉の方:長谷川季子 ほか
舞台脚本のあらすじ(パンフレットより)
享保七年の秋、秩父山中大台ケ原にある自源流、真崎道場近くの山道である。真崎備前守の道場には、日本中から集まった剣士で賑わっているのだ。その数、三千人を越えるといわれている。夕暮れの道を秩父神社の宮司の娘のお縫がやってきた。その時、ほろ酔い機嫌の黒田藩の四人の武士が出てくる。真崎道場へ剣術の修行に来ている武士である。彼らは出合わせたお縫に酔いにまかせて狼藉をはたらきだしたのだ。そこへ一人の若者が現れる。若者は狼藉者を軽くあしらってお縫を救った。その若者こそ、真崎道場の師範代梅井多門の秘蔵弟子、美女丸と呼ばれる美剣士である。美女丸とお縫は道場でも仲の良い間柄であった。ところが、またも先ほどの藩士たちが勢い込んで出てくる。先ほどお縫に狼藉をはたらいた際、美女丸から受けた傷を根に持って意趣ばらしにきたのだ。藩士たちは、美女丸の言を振りきって激しく斬り込んでくる。無意識に刀を抜いた美女丸の剣はたちどころに数人の藩士を斬り倒してしまった。その激闘の中に真崎庄三郎が割って入ってきたが、既に美女丸の剣は取り返しのつかない一大事を引き起こしていたのである。呆然と立つ美女丸である。
*冴子よおまえは 舟木さんの自作詩の曲(組曲より)となっています。作詩:高峰雄作 作曲:山屋清
http://www.youtube.com/watch?v=2RGqJpua72Q
その日から、数日後、美女丸の一件は大問題に発展していた。黒田藩の使者が道場に談判にきている。道場主真崎備前守に対して、二人の使者は早速にも美女丸を引き渡すようにとせまるのだ。使者をひとまず帰したあと、備前守、庄三郎、そして梅井多門の三人は最後の決断を話し合った。誰もが美女丸を助けようとする気持ちに変わりはない。しかし、相手が相手だけに真崎道場も慎重にならざるをえない。居合わせた鹿島の佐吉や高弟たちのはやる気持ちをおさえ、梅井多門は美女丸を黒田藩に引き渡すと決意するのだ。多門は美女丸を呼び出し、自源流真崎道場の方針を伝える。その言を素直に聞き入れる美女丸である。そんな美女丸を案じてお縫があらわれる。そのお縫も梅井のすすめで江戸城大奥へ上がるというのだ。二人の間には、もう大台ケ原での楽しかったすべてが思い出になろうとしている。互いに背負った宿命を持ちながら、秩父山中を降りて行くのだった。
それから一ヶ月後、黒田藩の居城に到着した美女丸の一行は松平綱政の御膳に額突く、綱政は美女丸切腹を申しつけた。その綱政の命令に対して付き添った多門は、美女丸出生の秘密を告白しこの美女丸の命だけはと懇願する。美女丸の父は当代将軍徳川吉宗公であり、母は吉宗の側室お鯉の方であるという。将軍家のご落胤という美女丸の身分を打ち明けた多門の言葉に、綱政ら一同は驚きの表情で、目前に座す若い美剣士をあらためて見なおすのだった。美女丸は、はじめて己の出生の秘密を知ったのだった。一方、江戸城奥ノ院では、美女丸出現が大変な噂となって広まっていた。その噂は、すでにお鯉の方の耳にも入っていたのだ。お鯉の方はいまでは、奥女中になっているお縫を呼び寄せ、赤子の時、別れたままになっていた美女丸のことを聞き出すのだった。涙を湛えて美女丸を案じるお鯉であった。そこへ将軍吉宗が入ってくる。お鯉は二人の間に生まれた美女丸を、一刻も早く江戸城内へ迎えてほしいと申しでる。だがすでに、美女丸出現の噂は二人にはどうすることもできない難題をはらんでいたのである。城中のみにくい争いが何も知らない美女丸を間に起きようとしていた。そうした、城内の動きの中へ梅井多門と美女丸は登城した。いまだ相見えぬ父と母に初めて会える期待を胸に秘めてきた美女丸であった。だが対面は許されず、温かい将軍吉宗の言葉を伝えられるのみだった。松平頼安から示された書状には、父から授かった美女丸の新しい名前があった。「葵新吾」・・・今日からは葵新吾と名乗るようにとの言葉に、新吾は一切を忘れて心から喜びの言葉を告げる。久方ぶりに会うお縫も、新吾の新しい門出を喜んでくれた。江戸城外の濠端の道を二人は歩いた。過ぎ去った昔を思い出しながら・・・突然、二人の前に黒覆面の刺客が現れる。美女丸をねらった魚住源左衛門である。だが、葵新吾と名を変えた美女丸は、襲いかかる刺客たちを自源流の道場で学んだ剣さばきで鮮やかに斬り倒してしまった。剣の修業に諸国を歩もうとする葵新吾の真剣勝負が見事な勝利で始まったのである。
それから三年の歳月が流れた。ここは、常陸の鹿島神社近くである。日本一の春の大祭が近付いた鹿島の里は近在の人々が集まり大変な賑やかさである。その日は、江戸城内からも代参が訪れそのための縄張り争いが起きている。そうしたところへ逞しく成長した葵新吾が庄三郎を供にやってきた。世間の様々な事を知りたいという新吾である。この日も、秩父大台ケ原で知り合った佐吉の苦渋を知り。新吾は手助けを申し出るのだった。その佐吉にも娘お咲との間に暗い過去があった。お咲は酌婦であった。江戸城内にいるお縫とあまりにもよく似た顔かたちに新吾はあらためてお咲の身性を憐れむのだった。鹿島神社の祭礼が間近に迫った。将軍様の代参はお鯉の方が出られるとの噂である。騒然とする鹿島の里、そうした中を新吾は佐吉の一件で働いていた。人間同士の信頼を大切にしたいという新吾の気持ちは強かった。遠く漁火が見える大船津の料理屋。お咲のすべてを知ろうとする新吾。女の心を学びとろうとする新吾である。
そんな時、新吾との対面を心待ちにしているお鯉の方の気持ちを新吾に直々に伝えようと、お縫がひとあし早く鹿島神社にやってきた。新吾とお鯉の方が鹿島神社で対面するという噂は既に祭り見物の人々の間に広まっている。新吾は母との対面にどんな気持ちで待っているのか、多門も頼安もその心を案じかねていた。新吾は二人に自分の気持ちを言った。・・・幼な子は母に抱かれ、母を呼ぶことから言葉を覚えてまいります。だが、私にはその時期がありませんでした。母という言葉をしらず、父という言葉も知らずに育った、そんな私に、何んと呼べとおっしゃるのです。・・」と考え込む新吾に、頼安、多門は返す言葉もない。
鹿島神社の参道には悪代官の下島甚右衛門ら道中警固の面々が新吾の命をねらって待ちかまえている。お鯉の方代参の行列を目前にしてあたりはどことなく落ち着かない。そんなところへ、新吾がやって来た。一瞬の間だった。新吾は佐吉を助けて下島一味を斬ってしまう。佐吉とお咲の父娘の和解を遂げた新吾は梅井多門、真崎庄三郎と共にお鯉の方を迎えた。二十一年の年月の後、母と子は喜びの対面をした。一同の見守る中を、新吾は声を限りに呼んだ。「母上!・・・母上!・・」
2 舟木一夫ヒットパレード ~歌の花!心の虹!!~
新吾十番勝負/葵の剣/京の恋唄/夕映えのふたり/荒城の月(淀かほる)/高校三年生/学園広場/冴子よおまえは/再会/北国の街/雨の中に消えて/ブルートランペット/高原のお嬢さん/星の広場へ集まれ!/心配だからきてみたけど/北国にひとり/アロハ・オエ(淀かほる)
・・どなたか詩をご存知なら教えてくださ~い!
新吾十番勝負 作詩:植田梯子 作曲:安藤実現
さびしかろうと 涙は見せぬ
耐えて育った 山と河
抜いた刀に 抜いた刀に
涙かくして
新吾強いぞ 一人旅
耐えて育った 山と河
抜いた刀に 抜いた刀に
涙かくして
新吾強いぞ 一人旅
水に捨てよか 儚い恋は
いずれ一夜の 忘れ草
若いいのちを 若いいのちを
勝負にかけて
葵の剣は きょうも舞う
いずれ一夜の 忘れ草
若いいのちを 若いいのちを
勝負にかけて
葵の剣は きょうも舞う
誰が吹くのか 横笛遠く
風に流れて 消えてゆく
今宵新吾の 今宵新吾の
十番勝負
なぜかさびしい 月明り
風に流れて 消えてゆく
今宵新吾の 今宵新吾の
十番勝負
なぜかさびしい 月明り
大川橋蔵さんの美剣士ぶりの映像と舟木さんの歌唱でお楽しみください↑
平成11年(1999)中日劇場公演での新吾です。貫録!↓
葵の剣 作詩:土橋成男 作曲:山路進一
色もゆかしき 葵の紋に
母の面影 求めつつ
剣を命の 十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃(はくじん)冴えて 雲を呼ぶ
母の面影 求めつつ
剣を命の 十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃(はくじん)冴えて 雲を呼ぶ
香り胸打つ 葵の紋に
父の呼ぶ声 ふり捨てて
剣を命の十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃冴えて 夢を斬る
父の呼ぶ声 ふり捨てて
剣を命の十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃冴えて 夢を斬る
明日は花咲く 葵の紋に
映えてまぶしき 日の光
剣を命の十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃冴えて 虹をかく
映えてまぶしき 日の光
剣を命の十番勝負
ああ 葵新吾の行くところ
白刃冴えて 虹をかく
(文字数制限の都合上、その3(下)にもう少し続きを書きます)